「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を読み解く - 進む行政サービスのデジタル化

役所で書類手続きする女性

2022年6月、「デジタル社会の実現に向けた重点計画(※1)」が閣議決定されました。この重点計画には、デジタル社会の実現に向けて、迅速かつ重点的に実施すべき施策が明記されており、取り組みの羅針盤となるべきものです。

本記事では、重点計画の中から「国民に対する行政サービスのデジタル化」について取り上げ、今後どのような行政サービスがデジタル化されていく見通しなのかを紹介していきます。

「デジタル社会の実現に向けた重点計画」とは

2022年6月に閣議決定された「デジタル社会の実現に向けた重点計画」は、グローバルレベルのデジタル社会を実現するためのもので、さまざまな領域や場面におけるデジタル化についての指針が示されています。本記事のテーマである「国民に対する行政サービスのデジタル化」もその1つです。

行政サービスというと、紙の書類に何度も同じ内容を書かなければならない、印鑑がないと手続きができない、わざわざ役所まで出向かないとならない……といったマイナスのイメージを持つ方も少なくないでしょう。近年、ようやく多くの行政サービスで押印が廃止され、利用者の負担が軽減されつつありますが、書類の提出先が分かりにくかったり、本人確認のための添付書類が必要だったりと、デジタル化で改善できる手続きも多く残っています。

行政サービスのデジタル化を推進することで、政府は「スマートフォンによって60秒で手続が完結できる」「7日間で行政サービスを立ち上げられる」「民間並みのコストで実現できる」ことを目指しており、2025年までに実装することを目標に、デジタル庁が中心となって関係府省庁と連携して必要な制度やシステムの検討に取り組んでいます。

マイナンバーカードをベースに行政サービスのデジタル化を推進

政府は、2022年度末までにマイナンバーカード(個人番号カード)がほぼすべての国民に行き渡ることを目標としており、現在第2弾が実施されているマイナポイント等の施策により、普及促進が図られています。行政サービスのデジタル化は、このマイナンバーカード(およびマイナポータル)がベースとなっているものも多く、デジタル社会の実現を視野に利用範囲の拡大が進んでいます。

例えば、マイナンバーカードはすでに健康保険証として利用可能で、2024年度末には運転免許証との一体化、そして2025年度には在留カードとの一体化も予定されています。マイナンバーカードと健康保険証を一体化することで、転職や結婚・引越しをしても、健康保険証の発行を待つことなく、手続きが完了次第、(一体化した)マイナンバーカードで医療機関や薬局などを利用できるようになります。さらに、将来的にはマイナンバーカードを用いて、薬剤情報や特定健診情報、医療費通知情報を閲覧することができるようになる見通しです。これにより「お薬手帳」なども統合されることが期待されています(※2)。

その他にも、2022年度中の運用開始を目指して、マイナンバーカードの機能(電子証明書)のスマートフォン搭載を進めていく計画もあり、将来的には電子証明書の機能だけでなく、券面入力補助機能など、マイナンバーカードの持つほかの機能についても、スマートフォンへの搭載が検討されています。

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行政手続きのデジタル化で利便性向上を目指す

日本のパスポート

ワンストップサービスの推進に関する具体的な施策

利便性の向上の観点からとくに大きいのが、「ワンストップサービスの推進」です。これは、子育て・介護や引越し、死亡・相続時などの複雑な手続きをワンストップで完了できるようにするというものです。重点計画でワンストップサービスの具体的な施策として挙げられているのは以下の4つです。

・子育て・介護ワンストップサービス等の推進

保育所入所や児童手当の手続き、介護認定の申請手続きなどが、役所まで出向かなくても自宅のPCなどからオンラインで申請できます。申請にはマイナポータルを利用します。すでに利用できる自治体もありますが、すべての地方公共団体が対応できるよう、現在、デジタル庁がシステム改修などの支援を行っています。

・引越しワンストップサービスの推進

引越しでは多くの行政機関や民間事業者に、氏名や新住所などの情報を個別に届け出る必要があり、大きな負担となっています。また、必要な手続きが人それぞれ異なるため、手続き漏れが発生しやすい状況もあります。

現在、全市区町村においてマイナポータルを通じたオンラインによる転出届・転入予約を実現できるよう、マイナポータルを改修し、市区町村のシステム改修に対する支援が行われています。民間の手続きに関しては、民間事業者が提供する引越しポータルサイトを通じて、電気・ガス・水道などの手続きをワンストップで行えるサービスをはじめ、対象手続きの更なる拡大が検討されています。

・死亡・相続ワンストップサービスの推進

死亡や相続に関する手続きには多くの行政機関、民間事業者が関わり、特に、相続に関する手続きは非常に複雑です。そこで、死亡・相続に関する行政手続を見直して、遺族が行う手続きの負担を軽減するための取り組みが進められています。例えば、死亡に関する手続(死亡届及び死亡診断書の提出)をオンライン上でワンストップで完結できる仕組みの構築に向けて、課題の整理等が行われています。

・社会保険・税手続のワンストップ化の推進

企業が行う社会保険・税手続については、2020年からスタートしたマイナポータルAPIを活用したオンライン化・ワンストップ化の対象手続きが順次拡大しています。国民や事業者の負担軽減が見込まれるその他の手続きに関しても、対象拡大に向けて検討が進められています。

また老後の生活設計をより具体的にイメージできるようにするため、「年金簡易試算Web(公的年金シミュレーター)」が2022年4月から試験運用されています。利用状況や運用実験などを踏まえて、UIやUXを向上するための改善を継続的に実施するとしています。

行政サービスのデジタル化の取り組み

利用者の負担を軽減するため、その他にも行政サービスのデジタル化の取り組みは進んでいます。重点計画として、以下のような施策が挙げられています。

・旅券(パスポート)申請のデジタル化

パスポートに関しては、(マイナポータルを利用して)マイナンバーカードの公的個人認証機能を活用し、本年度中にオンラインでの申請が可能となります。また、2024年度を目安に、戸籍謄本の添付を省略できるなど、さらなる申請負担の軽減が図られる予定です。

・在留関係手続のデジタル化

在留関係手続きのデジタル化については、2022年3月よりマイナンバーカードの公的個人認証機能を活用してオンライン申請が可能になりました。今後はさらに利便性を向上し、利用率の引き上げを目指して、サービス拡充が図られる予定です。

・入国手続などのデジタル化

日本への入国に係る手続きについては、すでに2021年12月に「Visit Japan Webサービス(※3)」の運用がスタートしています。Visit Japan Webサービスは、海外からの入国者(海外から帰国する日本人も含む)が入国時に検疫・入国審査・税関申告の入国手続きなどを行えるWebサービスで、デジタル庁が提供しています。

感染症などの効率的な水際対策と、利用者の利便性向上を図る観点から、スマートフォンなどの利用を通じたデジタル化を一層進め、さらなる効率化を進めるための機能開発が進んでいます。

・国税関係手続のデジタル化の推進

国税に関してはすでにe-Tax(イータックス)で電子申告が可能となっていますが、デジタルを活用して、納税者の利便性をより一層向上し、業務およびシステムの効率化・合理化を図っていくとしています。具体的には、現状のシステムの機能を整理し、またマイナポータルとの連携拡充や、年末調整控除申告書作成用ソフトウェアなどの利用促進を図り、関連するシステムなども含めて、手続き全体のデジタル化とUI・UXの改善が推進される予定です。

その他にも、新型コロナワクチン接種証明書アプリの利用推進、特定公的給付制度の活用および公金受取口座の登録・利用の推進など、緊急時においても必要な行政サービスを迅速に届けられるよう、行政サービスのデジタル化を推進していくとしています。

デジタル庁が司令塔となり、重点計画の取り組みを牽引

デジタル庁はこの重点計画において、「デジタル社会の実現に向けて、司令塔として、主導的な役割を担い、関係者によるデジタル化の取り組みを牽引していく」とその役割を宣言しています。また、重点計画では行政サービスにとどまらず、社会全体のデジタル化、例えば、「デジタル田園都市国家構想」の実現に向けて、特に重点的に取り組むべき施策や地域ビジョン、今後の進め方なども提示されています。

さまざまな関係府省庁や、国と地方自治体、民間事業者などが複雑に連携する行政サービスを、デジタル庁の主導によって、デジタル化やワンストップサービス化が今後ますます加速していくでしょう。

なお、本記事では幅広い施策の中から、特に「行政サービスのデジタル化」にフォーカスしています。「デジタル社会の実現に向けた重点計画」の概要および本文については、こちらからご確認ください。

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