契約ライフサイクル管理(CLM)の導入に向けてー効果的なビジネスケースの作り方

シェアオフィスでパソコンを使ってビジネスケースを作成するアジア人男性

新しいシステムやソフトウェアがどんなに優れていても、その投資を正当化するための明確で説得力のあるビジネスケースや予測されるビジネス上の成果がなければ、資金を調達できる可能性は低いでしょう。これは、契約ライフサイクル管理(CLM)システムのような、導入までに期間を要し、複雑になりがちなシステムへの投資に特に当てはまります。

限られた予算をめぐって複数のプロジェクトが競合する中、CLMのメリットを理解して説明すること、つまり、その投資が経営目標を達成するためにどのように役立つかを正確に示すことは、迅速かつ決定的な承認を得るために不可欠です。

優れたビジネスケースに含まれるポイントとは

優れたビジネスケースは、本質的に以下3つの要素を含んでいます。

  • 現状を正しく、そして詳細に把握できていること
  • 達成可能な望ましい将来の状態について具体的に描けていること
  • 現在から未来(あるべき姿)への道筋を明確に描けていること

結局のところ、どんな投資も最終的には利益を追求します。組織が投資する一番の理由は、その結果、さらなる収益が見込めるからです。CLMの導入を効果的に訴求するためには、期待される効果の金銭的価値を特定し、定量化し、明確にすることを念頭に置き、前述の3つのポイントをビジネスケースに含める必要があります。

また、投資によって得られる利益を、より広範な企業目標と整合させる必要もあります。例えば、もしあなたの組織が効率性を向上させることにコミットしているのであれば、CLMによって削減可能な具体的な無駄の領域(例えば、紙の使用、発送コスト、社外の協議会への支出など)を特定する必要があります。一方、会計年度内に一定数の新規顧客を獲得することが目標であれば、よりスムーズな契約によって締結までの期間を短縮し、期限内に商談を成立させる方法に焦点を当てます。

ビジネスケースを作成する際には、提案の各段階において、測定可能な指標に重点を置くようにしましょう。CLMは複数のチームやプロセスに影響を与える製品です。関連するチームやプロセスに関わる指標を理解し、CLM採用後にそれらの指標がどのように変化するかについて、現実的な見通しを立てる必要があります。

ビジネスケースとは・・・

ビジネスケース(Business Case)とは、大規模な投資や取り組むを行う際、ビジネスニーズや投資価値(どのくらいの利益が得られるのか等)を説明する資料のことです。「企画書」と似ていますが、主要なステークホルダーやプロジェクトのスポンサーを対象にしている点が異なります。

CLMの主なメリットー自社の目標を達成するためにCLMはどう役立つのか?

では、具体的にCLMは組織にどのような影響を与えるのでしょうか。CLMを利用するすべての組織が画一的に同じメリットを享受できるわけではありませんが、CLMが組織に与える付加価値の例をいくつか紹介します。

契約締結のスピードアップ

「時は金なり」ということわざがあるように、時間はお金と同じように貴重なものです。契約業務を迅速に進められれば、それだけ多くの収益を得られます。契約プロセスを自動化・標準化することで、契約締結までの時間を短縮できます。つまり、営業利益を向上し、納期を早め、従業員は重要な業務により多くの時間を割けるようになります。

ビジネスのしやすさが向上

CLMの導入がもたらす、定量化しにくいもう一つの大きな成果は、「ビジネスのしやすさ」です。ネット・プロモーター・スコア(NPS)や自社の評価指標を追跡している企業は、CLMが従業員と顧客の双方にとってより良いエクスペリエンスを生み出していると報告しています。これだけでも良い結果と言えますが、顧客と従業員が満足することは、長期的な収益にもつながります。

契約価値の損失を最小化

契約価値の損失は、当事者にとって最適とは言えない文言を含む契約を締結した場合に発生しやすいものです。また、契約管理が不十分で、契約内容や条項が明確でないために生じることもあります。CLMは、契約締結前後のプロセスにおける契約価値の損失をさまざまな方法で防止します。例えば、一元化された検索可能な保管場所を作成して情報の可用性を向上させたり、標準的なワークフローを事前に定義することで、グローバルレベルで可視性を高め、バージョン管理を自動化します。また、重要なイベント(更新日など)の前にリマインダを送信できるので、不測の事態を防ぐことも可能です。

コンプライアンスへの取り組みを簡素化

企業は契約書を作成する際、コンプライアンス・リスクを最小化するために、しばしば多大なリソースを割いています。これらのリソースには大きなコストがかかります。CLMは、すべての契約書が適切なタイミングで適切な担当者の手元に届くようにするための合理的なプロセスを構築することで、コンプライアンス対策に多額の費用を費やす必要性を減らします。また、従業員はいつでも条項ライブラリにアクセスできるため、承認された文言の使用を徹底することも可能です。

インテリジェントな分析のための土台作り

CLMは、あらゆる業務システムやツールと接続可能です。相互接続されたシステムは、契約データを収集・分析するための強固な基盤を提供します。そのデータ統合基盤は、傾向を特定し、新たな機会を発見し、重要なビジネス上の課題を解決するためのインテリジェントな分析ツールとなり得ます。

説得力のあるビジネスケースを作成するコツ

予算獲得に成功しているチームの多くは、説得力のある優れたストーリーを語っています。経営陣は契約ライフサイクル管理(CLM)システムやその価値について深く理解していない可能性もあるため、期待される効果についてわかりやすく説明することが非常に重要です。プレゼンする相手のことをよく理解し、彼らの業務や評価指標と結びつけましょう。CLMは組織レベルでも個人レベルでも大きな影響を与えます。オーディエンスに合わせて適切なメッセージを強調しましょう。

最後のステップとして、候補となるベンダーについて調べ、導入から実装、運用までのあらゆる段階で支援を提供してくれるベンダーを探します。ベンダーからどのようなサポートを受けられるかを正確に把握しておけば、プレゼンテーションを行う際の不安を減らし、経営陣や関係者からの質問にも的確に答えることができます。また、優れたベンダーは、幅広いユースケースや支援実績を示すことができるはずです。ベンダーの成功実績は、説得力のあるビジネスケースに必要な最後のピースになるでしょう。

※本記事は「How to Build a Business Case for Contract Lifecycle Management」の抄訳で、日本向けに一部加筆修正しています。 

筆者
Austin Miller
CLM Expert
公開