どうなる?マイナンバーカードの「これまで」と「これから」をわかりやすく解説

マイナンバーカードを使って子育てに関する申請を行う母親

2022年10月13日、デジタル庁は2024年秋までに現在の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードと一体化させる方針を明らかにしました。さらに同日、当初2026年度までに予定されていたマイナンバーカードと運転免許証の一体化を2024年度末に前倒ししたことや、マイナンバーカードの機能(電子証明書)のスマートフォンへの搭載についても言及するなど、今後ますます制度の拡充や利用範囲の拡大が見込まれます。そこで本記事では、デジタル庁の取り組みや最新動向、マイナンバーカードの将来構想をもとに、マイナンバーカード政策の「これまで」と「これから」をわかりやすく解説します。

デジタル庁の設立で普及が加速 - マイナンバーカード政策のこれまで

2016年1月から交付が開始されたマイナンバーカードですが、当初、普及の勢いは極めて緩やかでした。制度開始から4年間ほどは、1カ月あたりのカード交付数は10〜60万枚程度であり、2020年4月時点における累計交付数は約2000万枚と、全国民の2割に満たない交付率でした。

こうした状況を踏まえ、2020年10月、菅義偉前首相は首相就任時の所信表明演説において、マイナンバーカードを2年半のうちに全国民に行き渡らせることを目指すとし、その政策の司令塔として新たな組織「デジタル庁」を設置すると明言しました(※1)。

これまでに二度実施されている「マイナポイント事業」(マイナンバカード取得時にキャッシュレス決済サービスのポイントが付与される事業)や、2021年9月に設立されたデジタル庁が同年10月よりマイナンバーカードの健康保険証としての利用を本格開始するなど、さまざまな施策や利用範囲の拡充を通じて普及促進を図ります。その結果、2021年中旬には、1カ月あたりのカード交付数は200〜300万枚の水準に達し、2021年末には累計交付数5000万枚を超えました。

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現在の交付率は約54%。健康保険証との一体化でさらなる普及を目指す

では現在、マイナンバーカードの普及はどのような状況にあるのでしょうか。総務省によれば、2022年11月末時点における累計交付数は約6800万枚、人口に対する交付率は約54%(※2)となっています。カードの交付数は右肩上がりで広がっているものの、直近1年ほどでは普及の勢いがやや鈍化しています。

こうした流れを受けて、デジタル庁では、さらなるマイナンバーカードの利用範囲拡大や取得に向けたPR活動に力を入れています。同庁は河野太郎デジタル相によるマイナンバーカード取得を呼びかける動画を作成したほか、地方公共団体におけるマイナンバーカード活用事例動画などを公開(※3)。群馬県前橋市による移動困難者などに向けたタクシー運賃補助事業「マイタク」に、本人確認の手段としてマイナンバーカードを利用する事例などを紹介して、利用範囲の拡大をアピールしています。

さらに、現在は、プロスポーツやコンサートのチケット販売にマイナンバーカードを活用してチケットの高額転売を防ぐ案(※4)やセルフレジでのタバコや酒類購入時の年齢確認の手段として利用する案(※5)なども検討されており、利用範囲の拡大は今後も続いていく見込みです。

また、今回表明された健康保険証の廃止もマイナンバーカード普及促進の一環として位置づけられています。河野デジタル相は、マイナンバーカードは「デジタル社会の入口を開くパスポートのようなもの」としたうえで、国民への理解を得ながら取得を促していきたいと言及(※6)。2024年秋までに健康保険証を廃止し、マイナンバーカードとの一体化を目指すとともに、運転免許証との一体化についても早期化を目指すことを明らかにしました。

現在、デジタル庁では、『健康保険証との一体化に関するFAQ(よくある質問)』を公開するなどして、マイナンバーカードのメリット・安全性のPRを進めています。

将来、マイナンバーカードは本人確認のスタンダードになる?

健康保険証や運転免許証との一体化により、マイナンバーカードは国民全体に行き渡ったのち、どのように利用されるのでしょうか。その将来構想が、デジタル庁主幹の「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ」で議論されています。2022年8月に開催された同会議では、マイナンバーカードの利用シーン拡大構想として、以下の3つを挙げています(※7)。

「オンライン市役所サービス」構想

マイナンバーカードを基盤に、行政手続きのオンライン化を推進。引越し時の転入・転出届や、子育て・介護・年金・災害などに関する申請をオンラインで手続き可能にするとともに、従来、冊子や書面で届いていた行政からのお知らせなどを、スマートフォンへの通知で代替することを目指しています。

「市民カード」構想

従来、健康保険証や運転免許証などに分散していた身分証明の手段をマイナンバーカードに統合し、カード1枚でさまざまな行政サービスを受けられる「市民カード」とすることが目標とされています。これにより、国民は図書館の利用や印鑑登録証明証の発行、避難所の受付などに加え、運転免許などの資格証明も1枚のカードで実施できるようになります。また、地方公共団体では職員の出退勤などを管理する職員カードとしても利用する方針です。

「安全・便利なオンライン取引」構想

民間サービスの利用時などに、本人確認の手段としてマイナンバーカードを利用する構想です。すでに、ネット証券の口座開設時の本人確認など、160社以上の民間事業者がマイナンバーカードを用いてオンライン本人確認を行っています。今後もマイナンバーカードに搭載された電子証明書の活用を民間企業に促すなどして、利用範囲の拡大を図る方針です。

このように、今後の社会においては、行政手続きや身分証明にとどまらず、民間サービスの利用においてもオンラインでの契約やサービス申し込み時の本人確認など、マイナンバーカードが活用されるシーンが増えていくと予想されます。将来を見据え、民間企業でもマイナンバーカードを活用した顧客接点のデジタル化について検討するべき時期が来ているのかもしれません。

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