期間は最長「永久」?!ビジネス文書はどう保管するべきか

キャビネットにあるビジネス文書を探す人

ビジネスシーンではさまざまな文書を取り扱いますが、中には法律で長期間の保管が義務づけられているものもあります。期間中に不用意に紛失したり廃棄したりすると、ビジネス上の損害に直結することもあるため、厳密に保管する必要があります。では、アーカイブ性の観点から考えたとき、どのように文書を保管するのがベストなのでしょうか。本記事では、3つの方法を取り上げ、それぞれのメリット・デメリットを探っていきます。

長期保管が求められるビジネス文書 - 最長は“永久”

ビジネス文書の中には、法律で長期間の保管が義務づけられているものがあります。契約書はその1つです。例えば、会社法では「事業に関する重要な資料」の保管を義務付けており、該当する契約書は10年間保管しておかなければなりません。また、法人税法では、税務関係の帳簿や契約書に関して7年の保管期間が定められています(例外あり)。

それでは、保管期間中に廃棄したり、紛失したりするとどうなるでしょうか。これについては法で具体的に定義されていないため、特に罰則というものはありません。しかし、事業や取引の実態が確認できなければ、経営上や税務上の不利益を被る可能性があり、裁判などでも不利な立場に置かれかねません。

一方、文書の種類が行政文書となると、もっと長く保管しなければならないものがあります。例えば、「法律又は政令の制定、改正又は廃止その他の案件を閣議にかけるための決裁文書」の保管期間は30年と決められています。紛失したり、廃棄したりすると、罰則もあり得ます。行政文書を対象とする公文書管理法そのものには罰則規定はありませんが、法令や職務上の義務違反や、職務を怠ったと認められる場合は、国家公務員法に基づく懲戒処分が適用され、免職、停職、減給又は戒告の処分を受けるケースもあります。刑法上の罰則規定もあり、刑法第258条(公用文書等毀棄)に、「公務所の用に供する文書又は電磁的記録を毀棄した者は,3月以上7年以下の懲役に処する」とあります。

なお、公に法律がないため罰則規定もありませんが、永久保管が好ましいと考えられる文書もあります。「定款」や「登記・訴訟関連書類」「官公署への許認可に関わる届出書類」「効力が永続する契約書類」などがそれにあたります。これは、将来の訴訟、調査、監査に備えるためであり、企業の歴史をいつでも明らかにできるようにしておくという意味合いもあります。

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文書を保管する3つの方法と、それぞれのメリット・デメリット

それでは、アーカイブ性の観点から捉えたとき、重要な文書はどう保管するべきなのでしょうか。以下、主な3つの方法とそれぞれのメリット・デメリットをみていきましょう。

  1. 紙で保管する
  2. 紙の文書をスキャンしてPDFで保管する
  3. 電子文書で保管する

1. 紙で保管する

文書は、これまで紙に出力して回覧するのが一般的でした。印鑑を押して効力を持たせることもできます。紙で保管するのは最も普遍的な方法で、どのような組織にも採り入れやすいのがメリットといえます。

しかし、この保管方法にはデメリットもあります。まず、手作業で整理したり、ファイリングしなければならず、手間と時間がかかります。また、保管場所も確保しなければなりません。倉庫を借りた場合、固定費用を負担し続けることになります。さらに、紙の文書は共有がしにくく、検索性にも劣ります。よく整理されている状態であっても、すぐに目当ての文書を探し出すのは難しいものです。加えて、セキュリティの面でも不安が残ります。置き忘れや誤廃棄といった人的ミス、盗撮や持ち去りといった犯罪のリスクも排除できません。

さらに、紙やインクには何より経年劣化という媒体自体の問題もあります。紙の中にリグニンや酸といった不純物が含まれており、これが原因で時間の経過とともに黄色く変色してしまいます。昔よく使われていた酸性紙は50年ほどで劣化してしまいましたが、今は硫酸バンドという定着材の使用を控える中性紙が開発され、寿命も100年ほどに延びています。ただし、高温高湿の環境に弱いため、保管場所の空調には十分に配慮する必要があります。紙そのものの特性として、紫外線やチリ・ホコリ、虫なども大敵です。

2. 紙の文書をスキャンしてPDFで保管する

スキャナーや複合機などを使って紙の文書をスキャンし、PDFに変換して保管する方法もあります。メリットは、紙の保管に比べて組織内での共有・閲覧が行いやすい点です。また、保管場所を確保する必要がなくなり、省スペース化、ペーパーレス化も図れます。

デメリットは、スキャン作業が発生し手間がかかる点です。また、検索性の観点から工夫も必要になるでしょう。文書を探し当てやすくするには、組織内で文書の命名ルールを確立したり、OCRで文字認識を行ったりするなど、追加の作業が必要になります。また、電子ファイルで保管する場合、権限のある人物しかアクセスできないよう、セキュリティ対策を講じる必要もあります。

なお、スキャナー等で電子化した文書は原本として認められないケースがあります。そのため、紙で交わした契約書などは、廃棄せず、紙で保管しておく必要があります。また、電子帳簿保存法では、対象となる文書(請求書や見積書、注文書などの取引関係書類)を電子化して保存する際の取り扱い(スキャナ保存制度)について定めています。このように、文書によっては電子化が望ましくない、あるいは一定の要件を満たす必要があるので注意が必要です。

3. 電子文書で保管する

文字通り、電子データで作成した文書を電子文書として保管するものです。最近では、クラウド型の文書管理システムの利用も増えています。そのメリットは、紙の文書を保管・管理するのに比べて、手間とコストを大きく減らせることです。もちろん経年劣化の心配もありません。また、検索性が格段に向上し、パソコンやスマートフォンを使って目当ての文書をすぐに探し当てることができます。

また、契約書のように合意を必要とする文書の場合は、電子署名ソリューションを使えば、文書の送信、署名・捺印(締結)、保管・管理までの一連のプロセスをすべてオンライン上で完結できます。業務効率化を図るだけでなく、締結済み文書はクラウドに安全に保管され、紛失や改ざんといったセキュリティリスクも低減できます。

一方、「取引先(契約先)の理解を得る必要がある」「導入コストやシステム使用料がかかる」「セキュリティ対策を万全にする必要がある」といったデメリットもあります。外部システムを導入する際は、投資対効果を客観的に検討しながら、自社のニーズに合った製品・プランを選ぶことが大切です。

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DX推進でビジネス文書の電子化が加速

ビジネス文書は適切に保管する必要があり、紛失や破棄してしまった場合、経営や税務に不利益をもたらす可能性があります。また、一部の文書については法律で保管期間が定められており、中には将来の訴訟や調査に備えるため永久保管が推奨されているものもあります。

本記事では文書を保管する3つの方法を紹介しましたが、その一つ「紙で保管」することには、保管場所の確保や検索性の低さ、紛失のリスクなどデメリットが多くあります。また、紙の文書は事業年度の長さに比例して増えていき、管理も煩雑になりがちです。今後、さらなるDX(デジタルトランスフォーメーション)の加速とともに、あらゆるビジネス文書のデジタル化が進んでいくと考えられます。将来を見据えて、電子署名ソリューションなどを活用し、業務効率化を図りながら、適切に文書を保管できる方法への切り替えを検討してみてはいかがでしょうか。

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参考文献:「公文書をアーカイブする —事実は記録されている—」(大西愛、菅真城、小川千代子編著、大阪大学出版会)|「防ぐ技術・治す技術―紙資料保存マニュアル」(「防ぐ技術・治す技術-紙資料保存マニュアル-」編集ワーキング・グループ、社団法人 日本図書館協会)

免責事項:本記事は情報提供のみを目的としており、ごく短期間に法改正が行われる可能性があることから、弊社は全ての情報が最新のものである又は正確であることを保証していません。特定の法律上の質問については、適切な資格を有する専門家にご相談ください。

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