弁護士が解説!5分でわかる「契約書の読み方」

紙の契約書の内容を確認するビジネスパーソン

ビジネスでは欠かせない存在の契約書ですが、「契約書を読むのは難しい」と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、契約書は権利義務を発生させる重要な文書です。よく読まずに契約書にサインしてしまうと、思わぬ不利益を被るおそれがあります。特にビジネスパーソンにとっては、契約書の基本的な読み方を理解しておかなければならない場面もあるでしょう。

そこで本記事では、弁護士が重要なポイントを押さえながら、「契約書の読み方に関する基礎知識」をわかりやすく解説します。

ーーーーーーー 目次 ーーーーーーー

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契約書の基本的な構成

契約書は、以下の構成をとるのが一般的です。なお契約によっては、末尾に別紙を添付することもあります。

  1. タイトル
  2. 前文
  3. 本文
  4. 後文
  5. 署名欄

①タイトル

契約書の内容を一言で表すタイトルを付します。

例)業務委託契約書秘密保持契約書、不動産売買契約書、金銭消費貸借契約書など

②前文

当事者の氏名(名称)や契約締結日など、契約に関する基本的な情報を簡潔に記載します。契約書の中では、当事者を表す用語として「甲」「乙」などを用いるのが一般的です。これらの用語についても、前文で定義しておきます。

例)「○○(以下「甲」という。)と××(以下「乙」という。)は、2023年△月△付で、以下のとおり契約を締結する。」

③本文

契約書のメインとなる部分です。当事者間で適用されるルールの内容を具体的に記載します。

④後文

契約書の通数や原本の保管者などを記載します。

例)「本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙それぞれ記名押印の上、各自1通ずつを保管する。」

⑤署名欄

契約締結日を明記した上で、各当事者が記名押印または署名捺印する欄を設けます。

契約書の中で重要な条項とは?

きちんと作成された契約書であれば、無意味な条項が記載されていることはないはずです。そのため、契約書は基本的に隅々までチェックして理解を深める必要があります。とはいえ、すべての契約条項を細かくチェックすることは難しいかもしれません。その場合は、特に以下の条項を重点的にチェックしましょう。

  • 取引の内容を明らかにする条項
  • 権利義務を発生させる条項
  • 契約の終了に関する条項

取引の内容を明らかにする条項

取引の基本的な内容を記載した条項は、契約書の中でも重要性が高いので、必ず確認しておきましょう。例えば、売買契約の場合は「何をいくらで売るか(買うか)」が記載された条項です。

売買の実行に際して、引き渡す書類や満たすべき条件などが記載されていれば、その内容も把握します。不動産の売買については、目的物の状態を記載した容認事項も確認すべきです。

業務委託契約の場合は、「どのような業務を、いくらの報酬で委託(受託)するか」をチェックします。また、納期や検収に関するルールが記載されている場合は、その内容も確認する必要があります。

想定する取引の内容が、契約書に正しく反映されていることを確認しましょう。

権利義務を発生させる条項

取引の基本的な内容を定める条項のほかにも、当事者の権利義務を発生させる条項は重要です。例えば、業務委託契約においては、受託者が遵守すべき事項(=遵守事項)を定める場合があります。

委託者にとっては、遵守事項が緩やか過ぎると、受託者が想定外の行動を取るリスクが大きくなります。一方、受託者にとっては、遵守事項が厳しすぎると、業務時の裁量が非常に狭くなり、履行にあたってはあまりにも不自由なものとなってしまいます。

そのため、委託者と受託者は、それぞれの立場で遵守事項の内容をチェックし、不都合があれば修正を求める必要があります。そのほか、相手方に対する報告義務や通知義務、秘密保持義務、契約不適合責任など、当事者の権利義務に関わる条項はきちんと確認するようにします。

契約の終了に関する条項

将来的には、取引相手や契約条件を見直すため、契約を終了させるべきタイミングが来るでしょう。そのタイミングに備えて、契約の終了に関する条項は締結前に見ておくべきです。

具体的には契約の解除に関する条項や、契約の有効期間に関する条項などが挙げられます。契約解除の要件が厳しすぎる、あるいは有効期間が長すぎるなど、不適切な条項が含まれている場合は修正を求めましょう。

契約書の条文番号の読み方

契約書の条文番号は、大きなカテゴリから順に「条→項→号」となります。また、「号」より下のカテゴリを設ける必要がある場合は、「ア、イ、ウ……」や「a, b, c……」などを用いることもあります。

XXXXX契約書
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第1条
第2条
第3条
 1. ……
 2. ……
  (1)
  (2)
   ア
   イ 甲が乙に対して……した場合
  (3)
 3. ……

上記の例では、例えば「甲が乙に対して……した場合」と記載されている部分は、「第3条第2項第2号イ」となります。

契約書に頻出する用語の解説

契約書を読むにあたっては、用語の意味を正確に理解しておく必要があります。契約書に頻出する基本的な用語について、以下のポイントを解説します。

  • 「並びに」と「及び」、「又は」と「若しくは」の使い分け
  • 数量に関する用語|「以上」と「~を超えて」、「以下」と「未満」の使い分け
  • 期間に関する用語|「~から起算して」「~から~まで」

「並びに」と「及び」、「又は」と「若しくは」の使い分け

契約書の中では、並列の接続詞として「並びに」と「及び」がよく用いられます。どちらも英語の”and”と同じ意味ですが、「並びに」が上位(大きなカテゴリ)、「及び」が下位(小さなカテゴリ)と使い分けられています。

例)野球及びサッカーその他のスポーツ、並びに国語及び数学その他の学問

また、選択の接続詞として「又は」と「若しくは」がよく用いられます。どちらも英語の”or”と同じ意味ですが、「又は」が上位(大きなカテゴリ)、「若しくは」が下位(小さなカテゴリ)と使い分けられています。

例)野球若しくはサッカーその他のスポーツ、及び国語若しくは数学その他の学問

数量に関する用語|「以上」と「~を超えて」、「以下」と「未満」の使い分け

数量に関する用語に関しては、「以上」と「~を超えて」の使い分けと、「以下」と「未満」の使い分けが重要です。

①「以上」と「~を超えて」の違い

「実測値が3.00以上となったときは……」と記載されている場合、実測値が3.00ちょうどとなったときも条件を満たします。

これに対して、「実測値が3.00を超えたときは……」と記載されている場合には、実測値が3.00ちょうどでは条件を満たしません(3.00を超えてはじめて条件を満たします)。

②「以下」と「未満」の違い

「実測値が3.00以下となったときは……」と記載されている場合、実測値が3.00ちょうどとなったときも条件を満たします。

一方、「実測値が3.00未満となったときは……」と記載されている場合には、実測値が3.00ちょうどでは条件を満たしません(3.00を下回ってはじめて条件を満たします)。

期間に関する用語|「~から起算して」「~から~まで」

期間に関する用語としては、「~から起算して」や「~から~まで」の表記が契約書においてよく用いられます。

①「~から起算して」

例)契約締結日から起算して3カ月以内に

契約締結日から数えて3カ月以内という意味です。契約締結日の翌日からではなく、契約締結日から期間を数えます。例えば、契約締結日が2023年8月1日なら、「2023年10月31日までに」という意味になります。

②「~から~まで」

例)本契約に基づく報酬は、契約締結日(同日を含む)から契約終了日(同日を含まない)までの期間について発生する。

「~から~まで」と期間を表す場合は、初日と最終日を含むかどうかを明記すべきです(同日を含むor同日を含まない)。記載がない場合は、初日と最終日が期間に含まれるかどうかは解釈に委ねられます。

まとめ

「契約書は難しい」というイメージを持たれがちですが、ポイントを押さえれば内容を理解した上で読み進めることができるようになります。特に、経営者の方や、業務で契約書を取り扱うことの多いビジネスパーソンは、読み方を理解して契約書に対する抵抗感をなくすことで、円滑なビジネスにつなげられるでしょう。

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阿部 由羅(あべ ゆら)プロフィール写真
筆者
阿部 由羅
ゆら総合法律事務所・代表弁護士
公開
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