2021年6月施行「賃貸住宅管理業法」のポイントを解説

マンションを内覧するカップル

2021年6月15日、賃貸住宅管理業法(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)が完全施行されました。本法により、200戸以上の住戸を管理する賃貸住宅管理業者には「登録」が義務付けられました。また、不動産オーナーへの重要事項説明や書面交付の義務についても明記されていますが、オーナーが承諾すれば「電子データ」でも対応できるとされています。

賃貸住宅管理業法とは

賃貸住宅管理業法とは、不動産業者による賃貸住宅の管理方法を適正化するために、2020年6月12日に可決成立した法律です。主に不動産業者と不動産オーナーとの間のトラブルを防止してオーナーの利益を守るための規定が設けられています。

新法における重要なポイントは以下の2点です。

サブリース業者に対する規制

物件を一括で借り上げて自らがユーザーへ賃貸する「サブリース」に対する規制が強められました(2020年12月15日施行)。

賃貸住宅管理業者に対する規制

不動産オーナーから受託して賃貸住宅を管理する「賃貸住宅管理業者」全般に対する規制が強められました(2021年6月15日施行)。

今回の記事では、上記のうち、賃貸住宅管理業者に対する規制内容について、詳しく解説します。

賃貸住宅管理業者に対する規制内容

賃貸住宅管理業法では、賃貸住宅管理業者に対して以下のような規制が及びます。

  • 一定要件を満たす場合「登録」が必要になる
  • 重要事項説明を義務付ける
  • 有資格者や実務経験者の配置を義務付ける
  • 財産の分別管理
  • 定期報告

以下、順番にみていきます。

一定要件を満たす場合、登録を必須とする

これまで不動産賃貸管理業を行うために特別な登録は不要でした。しかし本法の施行により、一定要件を満たす場合は国土交通省の「登録」が義務付けられました。

登録が必要となるのは「想定管理戸数が200以上となる場合」です。つまり「入居者と締結するであろう賃貸借契約の数」が200以上になる不動産業者は、必ず登録しなければなりません。このとき、集合住宅などで管理物件が「1棟」であっても戸数が10戸であれば「10戸」と数えるので注意が必要です。

なお、無登録営業には罰則があり「1年以上の懲役または100万円以下の罰金刑」を科される可能性があります。

登録できない条件

  • 過去に賃貸住宅管理業の登録を取り消されてから5年以内
  • 禁錮以上の刑に処せられて刑の執行猶予期間終了後あるいは刑の執行終了後5年以内
  • 暴力団関係者
  • 破産手続き中の人
  • 判断能力が著しく低下している人

上記のような個人や法人は欠格事由となり、登録できません。

登録の更新

登録の効果は5年なので、いったん登録しても5年が過ぎる前に更新しなければなりません。期間満了日の90日前から30日前まで更新手続きが可能です。更新の際には手数料がかかり、基本的には18,700円、オンライン申請であれば18,000円とされています。

なお、更新しないと資格を失い、賃貸管理業を継続できなくなってしまうので注意が必要です。

重要事項説明、書面の交付を義務付ける

賃貸住宅管理業法では、登録業者に対して「オーナーへの事前の重要事項説明」を義務付けています。

契約締結前に、実務経験者や有資格者はオーナーへ管理業務の内容や実施方法などについて「書面を交付」して説明をしなければなりません。契約締結時にも契約内容を明記した「書面の交付」が必要です。

ただし契約の相手方が以下のような人や法人の場合、相手方自身に専門知識があるため重要事項説明は不要となります。

  • 賃貸住宅管理業者
  • サブリース業者
  • 宅地建物取引業者
  • 都市再生機構
  • 地方住宅供給公社

デジタル文書による対応が認められる

新法により、契約前の重要事項説明や契約時の契約書については、オーナーの承諾があれば「電磁的方法」による対応が可能であると明記されました。つまりPDFなどのデジタル文書や電子署名で対応できる可能性があります。

有資格者や実務経験者の配置を義務付ける

登録賃貸住宅管理業者は、事務所ごとに有資格者や実務経験者を1人以上、おかねばなりません。なお事務所が複数ある場合、「兼任」は認められないので注意しましょう。

財産の分別管理

登録賃貸住宅管理業者は、自社の財産とオーナー・借主から預かっている賃料や敷金などの財産を別々に管理しなければなりません。

定期報告

登録賃貸住宅管理業者は、不動産オーナーに対して物件の管理状況について定期的に報告しなければなりません。たとえば毎月1回家賃の入金を受けたタイミング、建物の状況について毎年1回報告するなどの対応が必要となるでしょう。

違反行為または無登録によるペナルティ

登録賃貸住宅管理業者が上記の義務に違反すると、行政処分として業務改善命令を受ける可能性があります。悪質と判断された場合、業務停止命令を受けたり登録を取り消され、全国へ情報公開されます。

業務停止や登録取消処分を受けたにもかかわらず不動産賃貸管理業務を行った場合には、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の刑事罰を適用される可能性があります。

また、200戸以上の物件を管理する予定があるにも関わらず登録しなかった場合の「無登録営業」にはさらに厳しい処罰が下されます。無登録だけではなく「不正な手段で登録した場合」や「他人への名義貸しを行った場合」にも同じ罰則が適用されるので注意しましょう。罰則の内容は1年以下の懲役または100万円以下の罰金刑です。

重要事項説明書や契約書に関する「電子データ」の利用が明記

賃貸住宅管理業法において「電子データ(電磁的記録)」での交付について明記されたことも注目すべきポイントです。

実はこれまでも電子契約などの電磁的方法の利用は実務上有効と考えられていましたが、法文上は明記されておらず、要件などもあいまいな状態でした。今回制定された法律によって電磁的記録での交付が明確に認められたので、重要事項説明書や契約書についても電子署名や電子データを利用できるようになります。

ただし、電磁的方法の利用には「オーナーの承諾」が必要となるので注意しましょう。後の紛争を防止するため、電子契約等を利用する際には、オーナーによる承諾や同意の内容を差し入れてもらう必要があります。

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