将来何ができる? AI(人工知能)の現在と未来

巨大スクリーンに映し出されたグラフをみる二人の男性

最近よく耳にする「AI」という言葉。ビジネスや日常生活において、さまざまな場面で利用されています。実際にはどのようなシーンや用途で活用され、どのような成果を上げているのでしょうか。そして、近い将来、AIによってどのようなことができるようになるのでしょうか。今回はAIの現状と可能性について、技術的な進化の歴史も踏まえて解説します。

ビジネスの現場で幅広く活用されるAI

AI(人工知能)は近年、急速に普及しています。将棋や囲碁ではAIが名人と対局して勝利を収め、世界に衝撃を与えました。他にもスマートフォンの顔認証や音声アシスタント機能、Webサイトのサポート用チャットボットといった身近なところから、クルマの自動運転まで、さまざまな分野でAIが活用されているのは周知の通りです。

今後ますます活躍の場が広がるであろうAI。その可能性は技術の進歩とともに大きくなってきています。現在のAIのベースとなっている技術「機械学習」は、過去の膨大なデータから傾向の抽出や未来の予測を行います。たとえば、ショッピングサイトを利用しているとユーザーごとにおすすめの商品が表示されますが、そのユーザーの過去の購買履歴や閲覧履歴から、購入傾向に類似した商品を“おすすめ”と判別して表示することで、売上アップに貢献しています。さらに機械学習は、交通機関や宿泊施設の需要予測などにも用いられています(※1)。

AIが大きなブレークスルーを果たしたのは、「ディープラーニング」(深層学習)という技術によるものです。ディープラーニングで大きな進化を遂げたのが画像認識です。多層パーセプトロンやサポートベクターマシンなど、従来の技術では人の顔や物体などの認識率は頭打ちであり、実用レベルには厳しい状況でしたが、ディープラーニングの登場によって認識率は飛躍的に向上したのです。

ディープラーニングを用いた画像認識は、前述の顔認識以外にも、幅広い分野で利活用されています。たとえば、製品の製造現場では不良品の検出に使われ、また、建築物のメンテナンスでは亀裂などの異常検知に使われています。クルマの自動運転でも、車載カメラの映像から人や道路などを認識し、運転の制御に活用されています。医療分野では、CTやMRIなどの画像から、ガンや脳梗塞などの疾患の予兆を検知する試みが進められており、近い将来の実用化が期待されています。

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契約書をAIで解析し重要条項を抽出

ディープラーニングは画像認識に加え、「自然言語処理」(NLP:Natural Language Processing)の分野にもブレークスルーをもたらしました。自然言語処理とは、人間の言葉(自然言語)をコンピュータで処理する技術です。一般的に人間の話す言葉や人間の書く文章には、多少の曖昧さが含まれています。こうした曖昧さも、自然言語処理では意味や文脈までも解析して理解することができます。翻訳サイトの精度が飛躍的に向上しましたが、その背後にはディープラーニングを生かした自然言語処理の発達があります。

そして近年、自然言語処理を軸とするAIを活かした新しいサービスが登場しています。たとえば、ドキュサインでは膨大な契約書の中身をAIによって、法律とビジネスの観点から、重要な条項の抽出や比較、リスクもしくは有利な条件を含む箇所の特定などを自動で素早く行う製品「DocuSign Insight(※2)」を提供しています。ユーザーはこのサービスを利用することで、契約内容や文書の管理業務の合理化、リスク低減といった効果が得られます。いわゆる「リーガルテック」の分野でもAIは重宝され始めています。

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ディープラーニングによって、音の処理も進化を遂げています。音声認識の精度は格段に向上しました。加えて、新幹線の安全走行に向けた異常検知などにも応用されています。線路に設置したマイクから走行音を拾い、異常な音は出ていないか、AIによって正常な走行音と比較することで検知する仕組みが開発されました。

このようにAIの可能性はさまざまな分野で広がっています。技術面では、ディープラーニングに代表されるようなソフトウェアはもちろん、計算処理に用いるハードウェアの面で高速化させるためにAIが活用されています。そのうえ、ハードウェアは低価格化やクラウド化によって、導入や利用のハードルが下がっています。AIは今後もますます普及が進み、ビジネスや人々の生活に役立っていくでしょう。

 

筆者
安達 智洋
シニア・コンテンツ・マーケティング・マネージャー
公開
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