DXレポート2(中間とりまとめ)から紐解くDXの本質

巨大倉庫で働くヘルメットを被った女性

2018年9月に経済産業省が公表した「DXレポート~ITシステム“2025年の崖”の克服とDXの本格的な展開~」。その後2年あまり経過した現在、DX推進の動きはさらに加速しています。2020年12月には、取り組みの現状と今後の方向性をまとめた中間報告書「DXレポート2(中間とりまとめ)」が公表されました。今回は本レポートのポイントと、企業が取るべきアクションについてご紹介します。

コロナ禍で見えてきたDXの「正体」

(DXが実現しない場合)2025年以降、最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性がある - 2018年のレポートで示された「2025年の崖」とも表現されるこの予測は、わが国の置かれた厳しい状況をあらためて認識させるものでした。これをきっかけにDXの認知度があがり、DXによるビジネス変革に向けて動き出した企業も多いのではないでしょうか。

その最中、新型コロナウイルス感染症の拡大は、これまでビジネスで「常識」とされていた手法や習慣を大きく変えました。得意先への訪問が難しくなったり、「3密」を避けるためにテレワークの導入が進んだことから、場所や時間、デバイスを問わずに同意・契約・稟議を可能にする電子署名ソリューションやオンライン上でのコミュニケーションを円滑にするビジネスチャットツール、対面せずに商談を進めるためのウェブ会議システムなど、DXを推進するためのツールが一気に普及しました。言うまでもなく、この変化にいち早く対応できたのは早い段階から「働き方改革」で提唱されたワークスタイル変革に取り組み、積極的にDXを推進してきた企業です。

ただし、DX推進の取り組みはただ単に新しいシステムやツールを取り入れ、デジタル化を進めればよいというわけではありません。たとえば、テレワークでの商談や会議は、単にオンライン化しただけでは従来と比べて効率が低下すると指摘されています。内閣府が実施した調査では、出勤が減ったことをメリットと捉える一方、コミュニケーションが不十分だと感じている企業が多いことが明らかになりました。DXを実現するためには長期的な視点を持ち、着実に進めることが重要と言えます。

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急がれる「レガシー文化」からの脱却

薄暗いデータセンター

2018年のDXレポートでは、DXを阻害する要因のひとつとして、企業がこれまで使っていたシステム(レガシーシステム)が挙げられ、複雑化・ブラックボックス化したレガシーシステムの刷新が求められていました。しかし、システムの刷新だけでDXを実現することは難しく、実際にはビジネス全般にわたる大幅な見直しが必要です。「2025年の壁」という言葉に呼応してシステムを更新し、「当社はDXを達成した」と考えている企業もみられますが、実はDXの第一歩を踏み出したに過ぎないということになります。

さらに、システム更新には相応の時間がかかることから、過渡期となる間の業務が滞らないよう配慮する必要があります。対応を急ぐあまり、十分な確認を行わず新システムに移行した場合は業務効率が低下し、むしろDXから遠ざかってしまう結果を招きかねません。

また、企業によってはシステム更新を情報システム部門の仕事と捉え、計画から運用まで委ねてしまうケースも見られます。DXはシステムだけでなくビジネス全体を変革するものであり、そこには「専門的な業務は担当部門に丸投げする」といった古い企業文化(レガシー文化)の見直しも含まれています。

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ケース別DX推進のポイント

パソコンで仕事をするスーツを着た男性

コロナ禍による社会構造の変化は、今後の生活にはデジタル化が不可欠であり、さまざまな分野でデジタル化が加速したという認識を人々に与えました。DXレポート2では、今後のビジネスにおける価値創出の中心がデジタル領域に移行し、その変化に対応するためにもデジタル化をさらに加速する必要があると指摘しています。

現在のところ「DXを達成している」と認識している企業は全体の1割程度で、他の9割は「まだ着手していない」もしくは「変革の途上」と回答しています。レポートではDXによるデジタル企業(デジタル技術を活用し、ビジネスを成功につなげる企業)への変革プロセスを分析し、今後企業が行うべきアクションと施策を以下の3つに分けて提案しています。

  1. 直ちに(超短期)
  • 事業継続を可能とする最も迅速な対処策として、業務ソフトウェアやコミュニケーションツールなど市販製品・サービスを導入する(業務のオンライン化、業務プロセスのデジタル化、顧客設定のデジタル化、従業員の安全・健康管理のデジタル化)
  • 製品導入の成功を「経営トップのリーダーシップにより企業文化を変革する小さな成功体験」とし、変化を受容し歓迎する組織文化への転換の起点とする
  • DXレポート、DX推進指標とそのガイダンス、デジタルガバナンス・コード等を参照し、DXについて認知し理解を深める
  1. 短期
  • DXを担う関係者(経営層、事業部門、IT部門)間で目的、自社のDX戦略、進め方等に関する共通理解を形成する
  • DXの推進体制の要諦となる経営層(CIO/CDXO)によるガバナンスを確立する
  • 多様な人材とのコラボレーションなど、柔軟かつスピーディーに社外のリソースとコンタクトできるリモートワーク環境を整備する
  • コロナ禍による環境変化を踏まえ、業務プロセスをデジタル前提・顧客起点で見直す
  • DX推進指標等を用い、推進状況を定期的に把握する
  1. 中長期
  • 環境変化を把握し、迅速に製品・サービスを市場に提示しつつ検証し続けるための内製アジャイル開発体制を確立する
  • DXを対等な立場で支援できるベンダー企業とのパートナーシップを構築する(ベンダー企業の変革も推進)
  • 協調領域の形成により投資を削減、生み出した投資余力を競争領域に配分していく投資余力循環を確立する
  • 多様な人材が活躍する時代を見据え、ジョブ型人事制度の拡大を検討する
  • 変革を主導・けん引する人材をユーザー企業内に確保する。専門性を評価する仕組みや、リカレント学習の仕組みを整備する

これらの項目はいずれもDX実現に欠かせないものですが、現在まで十分な検討を重ねている企業と、これから着手しようとする企業では理解度に大きな差があり、そのため実現までのプロセスも変わってきます。レポートでは未着手・着手直後の企業には「DXの理解」を、推進中の企業には「DX推進体制の整備」を、そして、すでに実績を上げている企業には「変革を継続する能力獲得」を目標としたポイントを提示することにより、それぞれの段階で最も優先して取り組むべき施策をアドバイスしています。

まとめ

DXレポート2では今後めざすべきデジタル社会の姿として、「社会課題の解決や新たな価値、体験の提供が迅速になされた安心・安全な社会」、「デジタルを活用してグローバルで活躍する競争力の高い企業や、カーボンニュートラルをはじめとした世界の持続的発展に貢献する産業が生まれる社会」を挙げています。ここで重要なのは、DXは社会課題解決の原動力になると同時に、企業の成長・競争力向上につながる可能性を持っているということです。

「DX=レガシーシステム刷新」や「DX=システム担当者の仕事」といった誤った認識を改め、自社の置かれた現状を理解し、将来に向けた方向性を企業全体で考える時期が来ていると言えるでしょう。

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筆者
Tomohiro Adachi
Content Marketing Manager
公開