【2022年施行】改正雇用保険法のポイントを解説

65歳以上の兼業・副業者の雇用保険特例加入とは

カフェでくつろぐ老夫婦

2022年1月に改正雇用保険法が施行され、同年4月からは65歳以上の兼業・副業者向けの新たな雇用保険適用の制度がスタートします。この背景には、少子高齢化・人口減少により、社会を支える働き手となる労働人口が減り続けている現状があります。今回は雇用保険法の改正をテーマに、働く意欲と能力を持つシニア人材のさらなる活躍促進に向けた、65歳以上の兼業・副業者の雇用保険特例加入(二重加入)について解説します。

改正雇用保険法の背景・目的

雇用保険は、労働者の生活を支えるために設けられた強制保険制度です。失業者や教育訓練を受ける者などに対して、失業等給付を支給し、生活及び雇用の安定や就職の促進を図ることを制度の目的としています(※1)。つまり、雇用保険は、対象者が新たな仕事に就くことを前提とした制度と言えます。

そのため、以前は退職者の割合の多い65歳以上の高齢者に対して、雇用保険は非常に限定的な条件を定めていました。例えば、2016年12月31日までの雇用保険法では、65歳以上の労働者が雇用保険適用を受けるためには「65歳になる前から雇用されている事業所で、65歳以降も継続して雇用される場合」といった条件をクリアする必要がありました。

しかし、一方で、総人口に占める65歳以上の割合が21%を超えている「超高齢社会」の日本では、労働力人口の減少が大きな問題となっており(※2)、そうした問題に対応するため、「高齢者の活躍」を促す制度の見直しが行われています。

2020年には高年齢者雇用安定法が改正され、70才までの就業機会の確保をするよう、事業者に努力義務を求め、高齢者の活躍を促進しています。

こうした動きのなかで、65歳以上の高齢者の就業機会の確保やセーフティーネットの整備を図ることが、今回の改正雇用保険法の目的です(※3)。

65歳以上に対する雇用保険適用の現状

65歳以上の高齢者に対する雇用保険の適用条件は、現状、以下のような枠組みになっています。

  1. 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
  2. 31日以上引き続き雇用されることが見込まれること

しかし、これでは、副業・兼業する65歳以上の高齢者に対する雇用保険適用が制限されてしまうおそれがあります。2020年の総務省の調査によれば、男性の場合、65歳以降では非正規雇用の割合が急増します(※4)。そのため、副業・兼業をする65歳以上も増加傾向にありますが、この適用条件では、2つ以上の事業所をかけ持ちで働き、いずれの事業所でも1週間の労働時間が20時間未満であるときには、雇用保険が適用されないことになります。

例えば、ある65歳以上の高齢者が、事業所Aで週15時間、事業所Bで週13時間勤務する場合、1週間の合計労働時間は合計28時間になりますが、いずれの事業所でも1週間に20時間以上の就労をしていないため、雇用保険が適用されないことになります。

ところが昨今、65歳以上の高齢者の活躍を促し、副業・兼業の促進を図るために、新しい枠組みが検討されるようになりました。それが、2022年1月からの改正雇用保険法施行に伴い導入される、二重加入の特例制度です。

改正後は65歳以上の副業・兼業者も雇用保険加入が容易に

今回の改正雇用保険法では、試験的な目的のもとで、対象を高年齢者に限定した雇用保険適用に関する特例が設けられています。次の3要件を満たすときは、雇用保険の二重加入が認められます(※5)。

  1. 2以上の事業所で雇用される65歳以上の高齢者である
  2. それぞれの事業所の週所定労働時間が20時間未満である
  3. 複数事業所(5時間以上の事業所を合計)の週所定労働時間合計が20時間以上である
副業・兼業に係る雇用保険での対応1 副業・兼業に係る雇用保険での対応2

引用:厚生労働省 職業安定分科会雇用保険部会(第 151 回)資料1-2

つまり、65歳以上の兼業・副業者で、2つの事業所における1週間の合計労働時間が20時間を超えていれば、2つの事業所のどちらか、又は両方で雇用保険に加入することができます。

また、65歳以上の高齢者は、雇用保険の区分上は「高年齢被保険者」となり、失業給付は一時金(高年齢求職者給付金)の形で支払われます。二重加入の場合、一時金は2事業所分の賃金を合算した額をベースとして支給され、片方だけ失業(部分失業)したときにも、失われた賃金に応じた保険給付が行われます(※6)。

注意すべき点は、あくまでも「労働者からの申し出により適用されるもの」であり、「労働者本人の意思に関係なく機械的に雇用保険に加入となるわけではない」という点です。雇用保険の加入を希望する際には、労働者自ら、その旨を事業者に申し出る必要があります。

なお、労働者がこの申し出をしたことを理由にして、事業者は労働者に対して解雇、その他不利益な扱いをしてはならないとされています。

多様化する雇用形態に対応するために、人事労務業務のデジタル化を

高年齢者雇用安定法の改正や改正雇用保険法の施行により、65歳以上の高齢者が働きやすい環境が整いつつあります。一方で、就労を希望する65歳以上の高齢者のために働く機会を確保することが、企業の努力義務となり、多様化する雇用への対応が求められています。

少子高齢化や公的年金の繰り下げ受給などの影響を受けて、定年後のシニア世代の「働けるうちは長く働く」という意識は強まっています。実際に、高年齢者の雇用者数は増加傾向にあり、今後も65歳以上の高齢者の雇用保険加入は今後も増えていくと予想されます(※7)。

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参考:

 

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