テレワーク最前線シリーズ3:IT担当者がいなくても始められるテレワーク

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シリーズ「テレワーク最前線」では、これまでテレワークの基礎知識として導入手順とポイント、テレワーク導入に利用可能な助成金と補助金についてご紹介してきました。

テレワークの導入の仕方も分かったし、政府や自治体からのお金の補助があることも分かった。でもうちの会社にはIT専任者がいないので本当に導入できるのだろうか、導入しても日々の運用ができるのだろうか ー と不安に思う企業経営者や総務・労務担当者もいるのではないでしょうか?

そこで今回は、国や自治体が用意しているテレワークの導入および運用へのアドバイス支援事業をご紹介します。

テレワーク導入の際に活用したい支援事業

「費用を補助してもらえるのはうれしい。だがお金だけではできないことも多い。テレワークにはICT(情報通信技術)機器やツールの導入が必要だが、選定や導入、運用に際して専門知識を持っているIT専任者が必要なのではないだろうか。大企業ならまだしも我が社の規模では専任の担当者を置くのは難しい」と思っている方もいるかもしれません。

また、上司から「うちでもテレワークを導入しよう。国や自治体がお金の支援もあるから調べて欲しい。」と言われ途方にくれている総務・労務部長やご担当者もおられるのではないでしょうか。

ICT機器に関して言えば、導入したら終わりではありません。導入はしたが誰も使わずムダな投資になってしまった、機器やネットワークに障害が発生して業務が停止したが、IT専任者がいないために解決までに数日かかってしまった(その間テレワーカーの業務は停止、関係者の業務にも支障)など、システムの運用に関わる不安もあります。

心配すべきはICTのことだけではありません。

東京都産業労働局が平成31年3月にまとめた「多様な働き方に関する実態調査(テレワーク)」には、「在宅でテレワークをするデメリット」として以下の項目が挙げられています。

  • 勤務時間とそれ以外の時間の管理(37.3%)
  • 社内のコミュニケーションに支障がある(34.8%)
  • 長時間労働になりやすい(23.2%)
  • 情報漏えいが心配(19.1%)
  • 周囲の社員にしわ寄せがある(16.3%)
  • 業務効率の低下(15.4%)
  • 社内の評価に不安がある(14.1%)
  • 顧客等外部対応に支障がある(13.8%)
  • 昇格、昇任に不安がある(6.6%)

出典:東京都産業労働局 多様な働き方に関する実態調査(テレワーク) 平成31年3月

これらのデメリットは在宅勤務に限らず、サテライトオフィス勤務やモバイルワークの場合でも考えられます。つまり、テレワークを導入し実際に運用を開始したら、その次にこれらの不満が現場から上がってくる可能性が高いということです。その場合、上がってきた不満を一つひとつ解決していかなければなりません。

これはICT専任者がいれば済むということでもなく、ICTも含めたテレワーク全般について熟知した、広く深い知見を持った専門家が必要になってくるでしょう。

こんなときに頼れるテレワークの専門家を派遣してくれる制度があります。

テレワークマネージャー相談事業とは?

テレワークマネージャー相談事業とは、総務省が所管官庁として実施し、株式会社NTTデータ経営研究所に委託している「テレワークの知見、ノウハウ等を有する専門家(テレワークマネージャー)が、無料でテレワーク導入に関するアドバイス等」を実施する事業です。

概要は以下の通りです。

相談事業概要

参考:総務省 「テレワークマネージャー相談事業」について

総務省からは分かりやすいリーフレットも発行されており、そこでは「相談内容」として、上記の他に「セキュリティ対策のアドバイス」が含まれています。いずれにしても「等」とあるように、これら以外の幅広い相談ができるものと考えられます。

テレワークマネージャーは、NTTデータ経営研究所が外部からから集めてきた経験豊富なコンサルタントが務めています。企業の申請内容を見て、最適なマネージャーをアサインするのがNTTデータ経営研究所になります。

また、総務省のほかに、東京都では「ワークスタイル変革コンサルティング」という専門コンサルタントによるテレワーク導入支援サービスを無料で提供しています。

コンサルティング内容は以下の通りです。

  • テレワーク導入プロセスの構築
  • テレワーク適合業務の切り分け・可視化
  • テレワーク導入に向けた電子化
  • テレワークの定着支援・活用拡大に向けた提案

総務省および東京都がテレワーク支援として提供している事業には、いずれも相談回数などに上限がありますので、それぞれのサイトから詳細を確認してください。

テレワーク支援事業を利用する際のポイント

利用にあたっては、時間の制約があることから、事前準備として相談内容をしっかりまとめておくことが大切だと言えます。

シリーズ1ではテレワーク導入の流れを説明し、以下の6つのステップをご紹介しました。

  1. 導入の企画
  2. 現行業務の分析
  3. 導入する業務の切り分け
  4. 対象者の選定と勤務形態の検討
  5. 必要なICT機器とツールの選定
  6. テスト導入・本番稼働
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このうち①導入の企画(目的の明確化、推進体制の確立)と②現行業務の分析(勤務時間、使用文書、システム、個人情報、業務上のコミュニケーションを把握し、デジタル化する文書を決定)までは社内で済ませておくといいでしょう。その上で③、④、⑤についてテレワークマネージャーから具体的なアドバイスをもらうのです。

また実際の運用が始まってから現場から出てきそうな不満については「在宅でテレワークをするデメリット」として紹介しましたが、これらのうち、自社で出てきそうな不満は何か、具体的にはどのようなことが起こり得るかを検討しておき、その対策をテレワークマネージャーに相談するのが良いでしょう。

相談事業の活用前に、過去事例にも目を通しておくべきでしょう。テレワークマネージャー相談事業の前身である「テレワークマネージャー派遣事業」は平成28年から始まっており、平成28年~平成30年の事例集をそれぞれ総務省のサイトから入手することができます。特に自社と同じ業界あるいは同様の業態の事例は大いに参考になるはずです。

まとめ

本シリーズではここまで、テレワークとは何か、その導入の流れとポイント、利用できる助成金・補助金、そして専門家に相談できる制度があることをご紹介してきました。しかし多くの企業が「働き方改革」の大号令の下に、ここまで説明してきたようなことを理解しながらも、必ずしもテレワーク導入に全面的に成功しているとは限らないのです。

成功のためのセオリーと成功事例だけでは盤石ではありません。失敗事例からも学ぶ必要があると言えるでしょう。

そこで次回は、実際にテレワークを実施している人たちからの「やってみたらこんなことが・・・」という「テレワークあるある」をご紹介します。残念な働き方改革になってしまわないように、既に利用している人たちからの声を紹介し、そうならないための留意点を解説します。

 

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テレワーク最前線シリーズでは、テレワークの基礎知識から助成金や補助金、アドバイス事業などを活用して賢くテレワークを始める方法、またテレワークを成功させるために気をつけたいポイントなどをご紹介しています。

  1. きちんと理解できていますか? – テレワークの基礎知識
  2. 助成金・補助金の活用ですぐに始めるテレワーク
  3. IT担当者がいなくても始められるテレワーク
  4. 「テレワークあるある」から考える「真の働き方改革」とは?
  5. テレワーク時代の先を考える - 注目のワーケーション
筆者
安達 智洋
シニア・コンテンツ・マーケティング・マネージャー
公開
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