デジタルリーダーに学ぶ契約管理の方法とその特徴

合意・契約管理システムの現状(2021年)

オフィスで座る女性

企業はより良い顧客体験を提供し、生産性の向上やコスト削減を実現するために、ビジネスプロセスをデジタル化する必要に迫られています。中でも優先事項のひとつとして挙げられているのが、契約ライフサイクルの自動化です。

契約ライフサイクルとは?

それでは、契約ライフサイクルとは何なのでしょうか。一般的に契約ライフサイクル管理(CLM:Contract Lifecycle Management)とは、契約書の作成から、署名・捺印、実行、管理に至るまでの一連のプロセスを包括的に管理することを意味します。これには、売買契約やベンダー契約、採用通知、規約の更新、その他多様なタイプの書面による合意・契約が含まれ、ほとんどすべてのビジネスにおいて重要な役割を果たします。

企業が契約ライフサイクルをどのように管理しているかを評価するため、ドキュサインは Forrester 社に委託し、世界中の企業や組織でテクノロジーの購入に際し意思決定に携わっている1,087名を対象に調査を行いました。

デジタルリーダー(デジタル変革者)の出現

調査の結果、デジタル化した成熟度の高い契約プロセスを使用している企業(デジタルリーダーあるいはデジタル変革者)と成熟度が低い企業の間には、はっきりした違いがあることが判明しました。デジタルリーダーは、契約の実務、プロセス、使用するテクノロジー、そして収益のどの点においても、デジタル後進者(デジタルラガード)を上回っています。

年に1度実施し、今回で3回目となる本調査から、ハイライトと特に重要な事項を以下にご紹介します。詳細は、調査報告書の全文を掲載した「合意・契約管理システムの現状(2021年)」をご覧下さい。

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デジタルリーダーの契約管理はどう違うのか  

1. デジタルリーダーは、デジタル後進者と比べて好業績を実現

契約ライフサイクルのデジタル化が進んでいる企業は、成熟度の低い競合他社よりも多くの恩恵を享受し、業績面でも上回っています。とりわけ、デジタルリーダーは部署間の壁を取り払い、取引のサイクルを短縮し、情報伝達が容易にできている例が多く見られます。これは、デジタル化された契約プロセスによって全体的な機能性とイノベーションが向上していることを物語っています。

2. デジタルリーダーは、コロナ禍の中で変化するニーズに上手く対応

新型コロナウイルスの影響で突然テレワークへの移行を強いられた企業は、ビジネスを継続させるために、新たな状況に迅速に適応しなければなりませんでした。すでに契約を自動化するためのソリューションを導入しているデジタルリーダーは、想定外の変化に対しても迅速に対応することができます。結果、パンデミックによって契約プロセスをリモートでの管理に転換せざるを得なくなった際、そうした企業ではデジタル化されていない企業に比べて迅速に対応することができました。

3. コロナ禍を契機としたテクノロジー導入の流れは、終息後も継続

多くの企業や組織・団体が、テレワークや在宅勤務に対応するためにWeb会議や電子署名などのテクノロジーを導入したり、その利用を拡大しました。今や多くの組織は、こうしたデジタルツールが業績に与える全体的な効果を高く評価しており、96%の企業が、新たに導入したデジタルソリューションをパンデミック終息後も使い続けると回答しています。これは重要なポイントです。なぜなら、デジタルテクノロジーは、将来起こりうる劇的な変化(例えば、サプライチェーンの破綻、新規市場への参入、急激な成長など)に対して企業が備えるうえで役立つからです。

4. デジタルリーダーは契約ライフサイクル管理と契約分析ツールを活用

多くの組織はまずはじめに、物理的な制約をなくすために電子署名を導入しています。その後、次のステップとして、契約ワークフローの自動化とプロセスの標準化を通じてリスクを低減できる「契約ライフサイクル管理(CLM)」ソリューションを検討します。

今回の調査では、デジタル成熟度の高い組織の40%が CLM ソフトウェアを活用して契約ライフサイクルの連携と自動化を行っているのに対し、成熟度の低い組織ではわずか3%であるという結果が出ました。また、デジタルリーダーは契約分析ソフトの利用率もずっと高く、AI 技術で契約の分析を自動化して、契約締結前・締結後のリスク、責務、機会を見つけ出すのに役立てています。

5. 管理する契約が多いほど、自動化による恩恵は大きい

取り扱う契約の数が増えるにつれ、処理の複雑さや拡張性(スケーラビリティ)も増していきます。調査からは、デジタルリーダーは契約ライフサイクル全体をデジタル化することで、契約プロセスをマニュアルで行なっている組織と比べて、より多くの契約を処理できていることがわかります。

デジタルリーダーは、デジタル化・自動化されたプロセスにより、コストを削減し、処理速度を上げ、契約書の処理作業を改善し、より多くの契約を管理することができます。プロセス全体の自動化およびサポートを提供するテクノロジーは、成熟度のレベルに関わらずどの企業にとっても重要です。
合意・契約管理システムの現状(2021年)
ドキュサインの委託により
Forrester Consulting 社が実施した調査の報告書

6. 契約ライフサイクルに関わる複数のシステムを統合

今回の調査結果では、契約プロセスにおけるテクノロジーの連携が不十分なためにもたらされる弊害が浮き彫りになりました。例えば、56%の回答者が、文書を作成する際、既存システムから契約書に顧客や製品の情報を手作業で入力することによる非効率性を感じています。手作業で情報を追加した場合、修正するための作業も必要になります。また、56%の企業は、契約が成立した後、締結した契約書のデータを記録システムに再度入力しなければなりません。文書作成や署名プロセスを自動化するだけでも漸進的な生産性向上をもたらすかもしれませんが、デジタルトランスフォーメーション(DX)を成功させるためには、それぞれの段階でのツールを、統合された単一の契約ライフサイクルに連携させる必要があります。

7. 手作業に頼るプロセスは、時間と経費、健全性を犠牲に

調査回答者のひとりは、手作業によるプロセスの弊害が(特にパンデミックの際には)いかに大きくなりうるかを次のように説明しています。「(1通の契約書に対して)25人分の署名を取得しなければならない状況を想像してみて下さい。社内の25人に契約書を回覧しなければなりません。特にコロナ禍において、全員が同じ場所にいるわけではないし、国内にいない人もいるでしょう。書類は世界各地に送付され、それから戻ってきます。これでは契約締結までのプロセスに恐ろしく時間がかかってしまいます。」

デジタルリーダーになるためには

契約ライフサイクルの自動化を始める、または加速させる場合、自動化が簡単ですぐに効果が現れるのはどのワークフローであるか考えることです。あるいは、面倒でボトルネックになってはいるもののビジネスへのインパクトにおいて重要で、ハイリターンをもたらすプロセスがないか、と考える方法もあります。

デジタルリーダーは、以下のような方法で契約ライフサイクルを管理しています。:

  • 契約書の作成にテンプレートを使用し、記録システムとの統合を行って、データを自動入力する。
  • ほぼ全ての契約書で電子署名を使用し、署名者の本人確認をデジタルで行う。
  • 契約書に記された情報のほとんどまたはすべてを、CRM、HCM、ERP システムなどの記録システムに自動的に取り込む。
  • 契約書の保存は、自動検索と分析を利用して単一のインターフェースで検索できる形で行う。
  • 契約の締結前と締結後の両方で分析を行う。

Forrester 社の調査報告書「合意・契約管理システムの現状(2021年)」には、どのような方法を取るべきかも記されています。

ここで、デジタルリーダーからのアドバイスをいくつかご紹介します。

「肝心なのは準備です。しっかりした基盤とプロセスを整え、全員が同じ認識を共有し、プロセスのどの要素で誰が責任を負うのか、それがどのように機能するのか、どのように計画されているのかを理解することには〔中略〕大きな価値があります。これにより、システムの実行や展開がより容易に進みます。プロセス全体の仕組みが大局的に理解されていることで、迅速かつ容易にスケールアップを推し進めることができました。」(法律サービス業界のお客様)

「トップダウンでの十全なサポートが不可欠です。(それにより)一貫性と理解が得られます。〔中略〕サイバーセキュリティ部門、コンプライアンス部門、法務部門で早期に着手し、彼らの支持と承認を得られるよう努力して、全員が共通認識を持てるようにすることが重要です。」(金融サービス業界のお客様)

ドキュサインが Forrester 社に委託した調査の報告書「合意・契約管理システムの現状(2021年)」は、以下リンクよりダウンロードいただけます。

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本ブログは「Digital Leaders and How They Manage Contracts Differently」の抄訳になります。