「令和3年度介護報酬改定」で何が変わるのか?介護業界における電子署名の活用法

食事の準備をする介護者

これまで、介護現場における書類作成業務の多さは、介護業界が抱える大きな課題の1つでした。しかし、2021年4月に通知された「令和3年度介護報酬改定」では、介護業務における文書負担軽減や手続きの効率化に関する項目が盛り込まれ、書類作成業務の効率化が推進されています。そうしたなかで、従来はなかなか普及が進めなかった介護業界への電子署名の活用が広がりつつあります。

今回は、先日開催した特別ウェビナー『介護サービス業界における電子署名の活用』の内容をもとに、介護業界の課題や令和3年度介護報酬改定のポイント、さらに介護業界における電子署名のユースケースについて解説します。

人手不足、紙の書類による業務負荷…介護業界が抱える課題とは?

現在、日本では少子高齢化が急速な勢いで進行しており、それに伴って、要介護者認定者の数も右肩上がりで増加しています。しかし一方で、介護人材は不足する傾向にあり、多くの介護事業者が慢性的な人手不足の状態にあります。

また、人手不足のほか介護現場における業務負荷も介護業界の大きな課題となっています。なかでも、重要事項説明書やケアプラン契約書といった書類の作成や郵送、保管などにかかる業務負荷は、以前から問題視されてきました。

今後、要介護者認定者が増加し、介護人材の確保も困難な状況が続くなかで、介護業務の負荷軽減は喫緊の課題といえます。他の業界では、書類作成業務の負荷軽減には、電子署名をはじめとしたITサービスの活用が一般的となっています。しかし、現状、日本国内の介護事業者のなかで、電子署名を導入しているのはごくわずかです。では、なぜ介護業界では電子署名の普及が進まないのでしょうか。

介護業界で電子署名が普及しない理由

介護業界で電子署名の普及が進まなかった理由の1つが、重要事項説明書やケアプランなどの書類に、サービス利用者や保証人などの記名・押印が必要とされていたことです。また、電子署名で記名・押印された書類についても、地方自治体ごとに取り扱いが分かれており、例えば、東京都では電子署名による記名・押印を認めるが、その他の地方自治体では認めないといった状況がありました。その結果として、介護業界では電子署名の普及が進まず、紙の書類作成が慣習化していたと考えられます。

こうした状況を生む背景には、厚生労働省が各種種類への記名・押印について、明確な指針を示していないことが大きく影響していました。そこで厚生労働省は、2019年8月から専門の委員会を設置し、介護業務における文書負担の軽減について検討を開始しました。そして、2021年4月に「令和3年度介護報酬改定」が通知され、そのなかで介護業務における書類への記名・押印について、明確な指針を示すに至りました。

「令和3年度介護報酬改定」で何が変わるのか?

「令和3年度介護報酬改定」において、厚生労働省はどのような指針を示しているでしょうか。ポイントは以下の2点です。

利用者への説明・同意等に係る見直し

「令和3年度介護報酬改定」では、重要事項説明書など、利用者への説明・同意を行う書類について、「電磁的記録による対応を原則認める」としています。つまり、PDFなどのデータで作成された書類を用いて利用者への説明を行うことが認められ、さらにその同意を得る際に電子署名を利用することも可能となりました。

また、書類への記名・押印についても、「求めないことが可能であること及びその場合の代替手段を明示することともに、様式例から押印欄を削除する」ともしており、利用者への説明・同意を行う書類の様式例から押印欄を削除する方針を示しています。現在、この通知を受けて、全国の地方自治体では、重要事項説明書などの書類から押印欄を削除する動きが進んでいます。

記録の保存等に係る見直し

さらに、「令和3年度介護報酬改定」では、文書の保管についても見直しを図っています。具体的には、介護サービスにおける各種記録の保存などについて、「適切な個人情報の取り扱いを求めたうえで、電磁的な対応を原則認める」としており、従来は紙の書類で保存が義務付けられていた書類をデータで保存することが認められました。これにより、電子署名で同意を得た書類などを、データのまま保存することが可能になりました。

上記2点の見直しに併せて、介護サービスに関する指定基準の省令(「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」)にも、「この省令の規定において書面で行うことが規定されている又は想定されているものについては、(中略)相手方の承諾を得て、書面に代えて、電磁的方法によることができる」という規定が設けられ、書類作成業務の効率化が推進されています。

なお、令和3年度介護報酬改定の詳細については、厚生労働省の資料「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」をご覧ください。

こうした厚生労働省の方針を受けて、ドキュサインでは、独自で地方自治体へのリサーチを実施しました。リサーチの対象は、九州地区の8つの地方自治体です。その結果、7県から回答を受け、そのいずれの地方自治体も「令和3年度介護報酬改定」の指針に原則として従う方針を示しました。なかでも、福岡県からは「(利用者への説明・同意の電磁的記録による対応について)すでに対応されているところも現状ある」という回答を受けており、すでに重要事項説明書などの書類の電子化が一部では進みつつあることが伺えました。

介護業界における電子署名の活用事例

今後、介護業務のどのような場面で電子署名が活用されていくのでしょうか。まず、想定されるのが、介護保険適用のケアプランや重要事項説明書の説明・同意などの手続きです。「令和3年度介護報酬改定」が定める「電磁的記録による対応」には、電子署名以外にもEメールを用いた説明・同意も含まれると解釈されています。しかし、本人認証の観点や、サービス利用者がEメールを操作できるかといった現実的な制約から、スマートフォンなどのモバイル機器でも簡単に説明・同意が行える電子署名を活用するのが適切だと考えられます。ドキュサインの電子署名には「同席での署名」機能があるため、署名者と直接面会できる状況では有効です。

また、介護保険適用外での契約書の手続きについは、従来から地方自治体などの行政に書類を提出する必要がないため、電子署名による書類の電子化が可能でした。今後、介護業界における書類の電子化が推進されるなかで、ますます電子署名の活用が予想されます。

そのほか、介護業界における人事業務にも電子署名は活用可能です。例えば、採用通知書や雇用契約書などの入社時に必要な書類などは、電子署名で電子化できます。さらに、電子署名を活用して採用通知書の送付を迅速化することで、他社よりもスピーディな採用活動が可能になり、結果として人材確保を有利に進めることが可能になります。

日本全国で介護事業を展開する株式会社やさしい手では、サービス利用者や従業員の記名・押印などの負担軽減を目的に、2019年からドキュサインを活用しています。介護保険適用外のサービス契約書や給付金申請に必要な従業員との手続きなどにドキュサインを活用し、書類の電子化を行っています。

電子署名で解決できる介護業界が抱える課題とは』のブログ記事では、同社の導入事例を紹介しています。また、電子署名の活用法について同社 管理本部 総合サポート部の根岸氏にお話しいただいたイベントの収録動画も配信していますので、合わせてご覧ください。

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