自治体の印鑑廃止はいつから?データでみるハンコの現状

日本の役所で書類に押印する女性

(更新日:2022年11月3日)

2020年に行政手続きにおける認印全廃が発表されて以降、日本全国で脱ハンコの流れが加速しています。では、どの領域で、どのくらい脱ハンコが実践されているのでしょうか。押印や対面での手続きに縛られずに各種手続きを行えるようになるのは、いつからなのでしょうか。本記事では、国や地方公共団体、民間企業などの押印廃止の取り組みを紹介しながら、複数のデータをもとに、現在の日本におけるハンコの現状を考察します。

印鑑廃止は現在進行形!押印が必要な行政手続きの99%以上で脱ハンコが実現

2020年、河野太郎規制改革相(当時)が、行政手続きにおける99%の押印が廃止可能であると表明したことを皮切りに、脱ハンコは全国に波及していきました。中央官庁でも、政府やデジタル庁の要請を受け、行政手続きにおける押印の全廃に向け動き出しました。現在、中央官庁の脱ハンコはどれくらい達成されているのでしょうか。

従来、民間から行政への手続きで押印を求めるものは合計15,611種類ありましたが、「経済財政運営と改革の基本方針2020(令和2年7月17日閣議決定)」や「規制改革実施計画(令和2年7月17日閣議決定)」に基づいて脱ハンコが推進され、2021年3月末時点で全体の約97%にあたる15,188種類が押印廃止されました(※1)。また、その後も見直しは継続されており、2022年6月時点で押印を求めていた行政手続きのうち99%以上で押印が廃止されています(※2)。

山形県は98.6%を廃止!地方公共団体における脱ハンコに向けた取り組み

では、地方公共団体ではどのくらい脱ハンコが進んでいるのでしょうか。2020年に地方公共団体が押印の見直しを実施する際の推進体制・作業手順・判断基準を示した『地方団体における押印見直しマニュアル』が作成され、それから約2年、さまざまな地方公共団体が脱ハンコに取り組んでいます。

例えば、福岡市はいち早く印鑑廃止に着手しています。2020年9月までに市が単独で見直しのできる約3,800種類の書類のすべてで押印を廃止しました(※3)。その活動は「福岡方式」とされ、現在では押印見直しの模範となっています。福岡市が取り組みのなかで最も重視した「職員の意識改革」は、『地方団体における押印見直しマニュアル』のなかで「組織の意思統一」として盛り込まれることとなりました。

また山形県は、2021年3月に『Yamagata 幸せデジタル化構想』を策定し、行政手続きのオンライン化、オープンデータ、テレワークWeb会議、AI/RPAの活用などのデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みを強力に推進。2021年度3月から半年間かけて実施された取り組みでは、98.6%の押印を廃止しました(※4)。

一方、地方公共団体によって脱ハンコの進捗にばらつきがあり、押印だけでなく、対面や郵送が必要な手続きが多く残っているケースもあるようです。

現在、政府は、日本におけるデジタル化の共通指針である『構造改革のためのデジタル原則(デジタル原則)』のなかで「紙の介在(書面、原本等)を見直し、申請・通知のデジタル化を基本とする」と掲げています。今後、この原則に基づき、行政手続きにおける脱ハンコはますます進んでいくと見込まれます(※5)。

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印鑑へのイメージにも変化が?ビジネスにおける脱ハンコの現状

テレワーク普及の影響などにより、民間企業でも脱ハンコが進んでいます。一般財団法人日本情報経済社会推進会(JIPDEC)によれば、民間企業が電子契約サービスを利用している割合は、2020年7月の調査で41.5%だったところ、約半年後の調査では67.2%に急増しています。(※6)。その後のテレワークの定着を考慮すると、電子契約サービスの利用は現在さらに拡大していると考えられるでしょう。

また、ドキュサインが実施した市場調査(参照:電子署名レポート2022)においても、ビジネスにおける電子署名の利用意向は88%と高く、前年の71%を大きく上回っています。電子署名の活用により、脱ハンコを推進し、生産性向上や業務の課題解決を図りたいという機運が、多くの企業で高まっていることがわかります。

それを裏付けるように、印鑑への意識にも変化が見られます。同レポートでは「印鑑のイメージ」についても取り上げており、「時代に合わない」(46.3%)という回答が最も多く、そのほかに「そもそも印鑑を押す、押してもらうことが煩わしい」(39.2%)「業務を煩雑にさせる」(24.9%)といった消極的な評価が並んでいます。職位別で分類すると、「時代に合わない」と最も多く回答しているのは「事業部長/部長クラス」であり、次いで「課長クラス」となっており、申請する側だけではなく、承認する側の管理職にとっても「押印」は非効率であり、煩わしいと感じられているようです。

このように、国・地方自治体・企業とそれぞれの領域において、印鑑の役割は変わりつつあり、代替する手段として電子署名・電子印鑑をはじめとしたツールが活用され始めています。かつて、根強かった「紙文化」「ハンコ文化」は退潮しつつあり、日本全体で生産性向上や業務効率化に向けた脱ハンコが推進されている―それが、日本におけるハンコの現状と言えるかもしれません。

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