スローガンは「GASU」。「デジタル庁」の新設で私たちの生活はどう変わるのか?

東京の駅前を行き交う通勤通学者

2020年9月の菅内閣の発足後、多くの報道がされている「デジタル庁」。菅内閣の主要な政策の1つと位置付けられているこの組織は、一体どんな役割を担うのでしょうか。そこで今回は、これまでの政府の取り組みを振り返りながら、デジタル庁の役割や、デジタル庁設置により私たちの社会がどう変わるのかについて考察していきます。

今、注目を集める「デジタル庁」とは?

デジタル庁とは、これまで複数の省庁に分散していたデジタル関連の政策を集約して、行政のデジタル化を強力に推進するための組織です。菅内閣の主要な政策の1つであり、現在、2021年中の設置を目指して準備が進められています(※1)。

ことの発端は、安倍前首相の辞任に伴う自民党総裁選の所信表明発表において、当時候補であった菅氏が「デジタル庁の設置」を公約に掲げたことです(※2)。

その後菅氏が当選し、内閣総理大臣に就任。9月16日の就任直後の記者会見において、デジタル庁の新設を表明します(※3)。さらに、デジタル庁を主導する役割として、内閣にデジタル改革担当大臣のポストを新設し、設置に向けた具体的な取り組みをスタートさせました。

デジタル改革担当大臣に就任した平井卓也氏は、就任直後の記者会見において、行政手続きの押印廃止などを推進している河野太郎行政改革担当大臣と連携を強化しながら、行政のデジタル化を推進する方針を表明(※4)。9月30日には、デジタル庁設置に向けた準備室を発足し、2021年1月召集の通常国会への関連法案提出の準備を進めています。

この準備室のスローガンとして、平井氏は「Government As Start Up」の略称である「GASU」(ガースー)を掲げ、菅首相の愛称を引用しながら、デジタル庁の設置が首相主導の重要政策であることを強調しました(※5)。

従来のデジタル関連の行政組織とは何が違う?

では、このデジタル庁は従来の組織と何が違うのでしょうか。

これまでも内閣官房の情報通信技術総合戦略室や、経済産業省、総務省など各省庁のデジタル関連部局によって、デジタル化の政策は進められてきました。

しかし、これらの組織はいわゆる「縦割り」でした。そのため、同じデジタル化の政策であっても、例えば、総務省はマイナンバーカード、経済産業省は民間企業、厚生労働省は健康保険証と、それぞれが所管する領域においてのみ政策を実施しており、一元的にデジタル化が進められることはありませんでした。

そして、その欠点が露呈したのが新型コロナウイルスの感染拡大です。コロナ禍において問題視された、給付金の給付の遅れや行政手続きの煩雑さは、各省庁や行政組織のシステムが統一されていないことや、保有するデータの連携が不足していたことが要因の1つになっていました。

そこで行政の縦割りを解消し、「司令塔」的な立場でデジタル化を推進するのがデジタル庁の役割です。

デジタル庁の設置で行政はどう変わる?

デジタル庁には、これまで分散していたデジタル関連政策の予算や人材が集約されます。さらに内閣府の組織とすることで、トップダウンで行政のデジタル化を推進します。

具体的なデジタル化の取り組みとして挙げられるのが、各省庁のシステムの一元化です。これまでばらつきがあった各省庁のシステムを一括調達し、データ様式の標準化も図ります。

これにより、省庁間でのスムーズなデータのやりとりが可能になり、行政の業務効率化が実現すると見込まれています。

デジタル庁設置で期待される効果は?

こうした行政の変化は、私たちの生活にどのような変化をもたらすのでしょうか。

まず予想されるのは、行政サービスの迅速化です。デジタル庁は、マイナンバーカードの普及促進を図り、さらに健康保険証や免許証との規格の統合を検討していることから、今後はスムーズな個人識別が可能になり、カード1枚で簡単に行政サービスが受けられたり、オンラインでの行政手続きが可能になったりすることが期待されます。

さらに、9月23日に政府が主催した「デジタル改革関係閣僚会議」においては、行政サービス以外にも、ビジネスや教育、医療といった分野のデジタル化促進についても言及されており(※6)、デジタル庁の設立を契機に、私たちの生活の広い範囲で変化が及ぶと予測されます。

例えば、教育の分野では、萩生田光一文部科学大臣が、義務教育を受ける生徒全員に学習用PCと高速ネットワーク環境を整備する「GIGAスクール構想」や教育におけるICT活用を強力に推進すると発言しています。また、田村憲久厚生労働大臣は、現在、新型コロナウイルス感染拡大防止のため特例措置として認められているオンライン診療を、恒久化するよう検討を進めるとしています。

さらに、河野行政改革担当大臣は「行政のオンライン化・デジタル化を妨げるものの1つに、判子がございます」と発言し、今後、印鑑証明などが必要な一部のものを除いて、行政手続きにおける押印を全面的に廃止していく方針だと明言しました。

こうした発言を受けて、菅首相は「デジタル化の利便性を実感できる社会を作っていきたい」と展望を述べ、社会全体におけるデジタル化の推進に意気込みを見せました。

日本の先を行く世界のデジタル化

コロナ禍において、驚異的な成果を上げ、世界から称賛を集めた台湾の防疫対策。その成功の中心には、デジタル担当大臣のオードリー・タン氏が主導する、高度な技術を駆使したデジタル政策がありました。

一方で、日本は、2020年7月に国連が発表した「世界電子政府ランキング」において14位という結果にとどまっており(※7)、先進的なデジタル政策が採られているとは言い難いのが現状です。しかし、デジタル庁の設置によって、デジタル化へ急速な進展に期待ができます。つまり、日本のデジタル化は今、スタート地点に立っています。来るべきデジタル化の時代に対応するためにも、現状の働き方や業務の進め方を見直し、できるところからデジタル化を進めてみてはいかがでしょうか。

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