政府と経済団体連携で急激に進む電子契約と電子承認

タブレットを使って電子署名する人

2020年5月、政府の規制改革推進会議は、行政手続きや民間企業同士の取引において不必要な書面、押印原則および対面主義を一掃するために、関係省庁にガイドラインやQ&Aを作成するよう提言しました。昨今は、テレワーク推進に向けた押印廃止に関する首相や大臣らの発言に注目する記事を多く目にするようになっています。

そこで今回は、政府がこれまでに発表した方針、またそれを受けて行政機関や企業が紙や印鑑を使った手続きを見直し、デジタル化を提唱しているニュースについてまとめてみました。

政府がデジタル時代に向けた行政手続および民民間手続の見直しを提言

2020年5月18日、内閣府が設置した規制改革推進会議が開かれました。その冒頭で西村経済産業大臣は、“書面主義や押印原則、対面主義を一掃して、デジタル化を進めることが大事である(発言内容を要約)”と述べています。

また、この会議では、経団連、経済同友会、日本商工会議所および新経済連盟から「書面規制、押印、対面規制の見直しについて」という<緊急要望>をまとめた資料が提出されました。要望事項は多岐にわたりますが、大きく、行政手続に関するものと民民間商慣行等による手続に関するものの2つに分けることができます。

(5月18日開催 第6回規制改革推進会議議事概要および議事次第資料2より抜粋)

(1)行政手続に関するもの

  • 以下の行政手続に関してペーパーレス、押印廃止、非対面手続を要請
  1. 社会保険・労働関係(健康保険、雇用保険等及び労働基準、労働安全等の各種申請・届出)
  2. 各種証明書(就労証明書、在職証明書等)
  3. 安全規制(施設等の点検・検査・責任者等について届出等)
  4. 業法(営業についての許認可・変更申請・各種届出等)
  5. 国税・地方税
  6. 補助金・交付金(交付申請、変更申請、交付、実績報告、成果報告等)
  7. 統計・調査
  8. 会計、人事関係書面など(契約書、領収書、見積書、承諾書、決裁など)
  9. 地方公共団体の手続など

(2)民民間の商慣行等による手続に関するもの

  • テレワーク推進のために社内外の双方でデジタル化を前提に抜本的な見直しを推進
  1. 社内手続の電子化。書面、押印、対面原則の見直し
  2. 他社に求める手続の電子的なやりとりの推進と押印の慣行の見直しおよびオンライン会議の推進
  • 特に要望の多かった分野(不動産、金融、会社法等一般法)については法令上の見直しも含め、重点的な取組みを要請 
  1. 不動産関係(売買時の重要事項説明書の書面交付等)
  2. 金融関係(口座開廃、振込変更等、顧客と金融機関間の手続きの書面・押印等)
  3. 会社法等一般法関係(取締役会議事録の取締役押印、単体財務書類のウェブ開示等)
  • 電子署名の利用拡大に向けて周知徹底と、クラウド技術を活用した電子証明の取扱の明確化

同会議の中では、民間企業では契約時に訴訟リスクを考慮して不要な押印を求める慣行が残っているという指摘もありました。このような不安を解消するためにも、同会議は各省庁に、<緊急要望>に対応したガイドラインとQ&Aの作成を求めました。

これに対応して政府は6月19日に押印についてのガイドライン(指針)をまとめ、契約書などに物理的に印鑑を押す商習慣が他の手段で代替できることを示し、押印廃止を促しました。

また、7月8日に政府と経済4団体が開いた会合では、デジタル技術を積極的に活用し、行政手続きおよび民間において、書面や押印が必要な制度や慣行を抜本的に見直すことを含む共同宣言を発表しました。

規制改革推進会議の提言を受け動き出した省庁・自治体

東京霞ヶ関の省庁街

規制改革推進会議の提言に先がけ、防衛省では4月24日に河野大臣が、“率先して押印廃止に取り組む”と会見で明言しています。

その直後の4月27日、経済財政諮問会議で安倍総理は、“テレワークの推進に向けて、押印や書面提出等の制度・慣行の見直しについて、緊急の対応措置を規制改革推進会議で早急に方針を取りまとめ、IT総合戦略本部と連携しつつ、着手できるものから順次実行していただきたい”と述べています。

5月18日の規制改革推進会議の提言は、この安倍総理の発言を受けたものです。

推進会議の提言を受け、金融庁では6月9日、押印廃止に向けた金融業界との検討会を設置しました。商慣習や制度面の問題点を整理し、必要があれば法改正にもつなげるとのことです。

実は、法令などで押印が義務付けられているのは、不動産の売買契約書や代表取締役変更などの一部にとどまっています。法務省では、サインや暗号化の技術で本人だと証明する電子証明でも法的に有効だと説明しています。

政府や中央省庁だけではなく、地方自治体でもペーパーレス、対面原則廃止の取り組みに前向きです。たとえば渋谷区では、ICT技術を積極的に取り入れた非来庁型サービスの推進に既に取り組んでいます。

一般企業でも電子契約、電子承認、押印廃止へ

こうした流れを受けて、民間企業でも電子契約、電子承認、押印廃止へと舵を取る企業が多数出てきてきます。

たとえば銀行業界では押印廃止が進んでいて、ある都市銀行では既に指静脈情報を登録すれば口座開設でき、生体認証で取引や諸手続きができる印鑑レス対応を実現しています。また別の都市銀行では、電子署名で法人融資契約が可能なサービスを始めています。今後はこうした取り組みがより一般的になっていくことでしょう。

ここで、ドキュサインを採用し、電子契約を取り入れている企業の一部をご紹介します。

株式会社ドワンゴ 個人クリエイターとの契約を電子化

「ネットに生まれて、ネットでつなげる」をコンセプトに日本のネット産業を牽引する株式会社ドワンゴ様。同社では、主催する巨大リアルイベント「ニコニコ超会議」に出演する個人クリエイターとの契約をドキュサインを使って電子化しています。

「署名者(個人クリエイター)は、新たにドキュサインのアカウントを作成する必要はなく、メール上のリンクをクリックしてそのまま署名するだけ。アカウント作成というステップが一つ減ることで、契約締結までのスピードが上がっている」「時間や場所にとらわれず、スマートフォンで簡単に確認、署名できるのでクリエイターに問題なく使っていただいている」と評価いただいています。

NECネッツエスアイ株式会社 電子署名を利用したペーパーレス化

NECグループのネットワーク通信工事及びシステムインテグレーションにおける中核会社NECネッツエスアイ株式会社様。以前より分散型ワークとデジタルトランスフォーメーションの自社実践に取り組んでいましたが、そのラストワンマイルとなるのが契約と承認プロセスを変革させるペーパーレス化でした。その中でも急務であった社外調達プロセスにドキュサインの電子署名を採用、現在では全社の紙によるプロセスを見直しさらなるドキュサインの活用方を検討されています。

最近では、IT企業をはじめ、先にご紹介した銀行などの金融機関、また大学などの教育機関や出版業界、不動産業界など、一般に保守的と思われてきた業種・業界でも電子契約への切り替えが行われています。連日のように報道されているので、ご存知の方も多いことでしょう。

また、6月9日付けの日本経済新聞には弊社CEO ダン・スプリンガーのインタビュー記事が掲載されており、6月12日付けの同新聞ではドキュサインの電子署名ソリューションやAI(人工知能)を活用した検索分析技術について紹介されています。

このように、押印や書面をデジタル化するソリューションとして電子署名電子印鑑が益々注目されてきており、従来紙やハンコが必要とされてきた制度や商慣習が大きく変わろうとしています。

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筆者
安達 智洋
シニア・コンテンツ・マーケティング・マネージャー
公開