取締役会議事録の電子化の流れについて

会議室

昨今、世間を賑わしている「取締役会議事録の電子化の流れ」について、弊社としての見解を交え以下に解説していきます。

ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、取締役会議事録については会社法369条(取締役会の決議)に以下の記載があります。

  • 3 取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
  • 4 前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。

3項については、議事録を書面で作成した場合に必要な手続きが記載されており、4項では議事録を電子化した場合の要件が記載されています。つまり、元々電子化する事を想定した上で作成されております。

では、なぜ今まで電子化は殆ど進んでいなかったのでしょうか。

4項に記載されている“法務省令で定める署名又は記名押印に変わる措置”が、日本の電子署名法に則った方式を指し示していると一般的に理解されており、その方式を利用した上で取締役会の議事録を電子化することに、企業がメリットを感じていなかったからではと推察されます。

ここから、さらにブレークダウンして解説していきます。

日本企業においては取締役員の数も多いですし、またかなり頻繁に役員の変更が行われています。日本の電子署名法に記載されている電子署名は、X509 PKIといった技術を使ったものを想定しており、電子署名を行う本人(自然人)は、予め本人確認(身分証明書、住民票、印鑑証明等が必要)を含む登録処理を行った上で、秘密鍵/公開鍵を含む電子証明書を認証局から発行する必要があります。一般的に本人確認はリモートでの対応はなく、面会形式で行う形が主流となっています。

現代の日本企業では、外国人の取締役も増えてきており、郵送費や議事録押印処理の長期化などの課題もあり、取締役会議事録の電子化については実現したいと要望は多くありましたが、外国人向けの電子証明書の発行や、役員交代に伴う新しい電子証明書の発行が難しいとの判断で、検討はされましたが実現には至らなかったケースが殆どでした。

ところが、現在のコロナウイルス禍においては、日本所属の取締役員でさえ、タイムリーに取締役会議事録に押印することが難しくなってきている背景もあり、電子化要件の緩和が求められてきたわけです。

法務省は一度、内閣府 成長戦略ワーキング・グループの中で、X509 PKI方式のリモート署名は、解釈上、会社法第369条第4項の署名又は記名押印に代わる措置と認められるとの見解を出しましたが、その後再度見直しを行い、今回リモート署名に加え、サービス提供事業者が利用者の指示を受け電子署名する、いわゆるクラウド型と呼ばれている方式も解釈上有効であるとの見解を各団体向けに発信した形です。今回は解釈の変更だけであり、解釈変更の見解が出された時点で、その解釈が有効となっています。

今回の解釈の拡大を受け、グローバル市場で幅広く展開され、多くの企業が採用している DocuSign eSignature でも対応できるようになります。つまり、ドキュサインの製品で取締役会議事録の電子化を容易に実現できるようになりました。

今回の解釈変更はあくまで会社法に関してだけであり、取締役会決議事項を登記申請する際に必要な議事録については、商業登記法施行規則に記載されている方式(従来の電子署名法に則た電子署名)が必要となりますのでご留意ください。

(追記)

商業登記のオンライン申請等を行う際に必要な添付書面情報(取締役会議事録等)の電子化に関する最新情報は、以下のブログをご覧ください。

・ 2020年9月3日、商業・法人の登記申請手続きのオンライン申請時に添付が必要な取締役員会・理事会議事録の電子化で、ドキュサインの利用が認められました。2021年2月15日、商業登記規則改正により、商業・法人登記における添付文書電子化の要件が緩和され、取締役会議事録の電子化がより一層簡単になりました。

最後に、弊社としましては継続的に関係各所に働きかけを行い、日本経済界でも議論されている紙・ハンコに依存した業務の電子化実現に向けて、今後も活動を推進していきます。

以下、一般社団法人 新経済連盟ウェブサイトの法務省から一般社団法人 新経済連盟に対する通知および公表内容からの抜粋になります。

【法務省の見解】

会社法上、取締役会に出席した取締役及び監査役は、当該取締役会の議事録に署名又は記名押印をしなければならないこととされています(会社法第369条第3項)。また、当該議事録が電磁的記録をもって作成されている場合には、署名又は記名押印に代わる措置として、電子署名をすることとされています(同条第4項、会社法施行規則第225条第1項第6号、第2項)。

当該措置は、取締役会に出席した取締役又は監査役が、取締役会の議事録の内容を確認し、その内容が正確であり、異議がないと判断したことを示すものであれば足りると考えられます。したがって、いわゆるリモート署名(注)やサービス提供事業者が利用者の指示を受けて電子署名を行うサービスであっても、取締役会に出席した取締役又は監査役がそのように判断したことを示すものとして、当該取締役会の議事録について、その意思に基づいて当該措置がとられていれば、署名又は記名押印に代わる措置としての電子署名として有効なものであると考えられます。

(注)サービス提供事業者のサーバに利用者の署名鍵を設置・保管し、利用者がサーバにリモートでログインした上で自らの署名鍵で当該事業者のサーバ上で電子署名を行うもの

尚、電子契約関連の法律に関しては「電子契約関連の法律まとめ ~電子署名を安心して利用いただくために~」にまとまっていますので、合わせてご参照ください。また、こちらのリンクより電子署名の適法性に関する資料をダウンロードいただけます。

 

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