改めて考えたいBCPの重要性 -感染症対策も踏まえたBCPの策定と見直し-

 

ノートパソコンを見ながら製図する人

台風や洪水等の自然災害の著しい激化や、感染症などによる社会活動の制限により、事業継続計画(以下、BCP)の重要性に改めて気づき、その策定や見直しを進める企業が増加してます。ドキュサインのブログでもBCPについて何度かご紹介してきましたが、今回は感染症対策を踏まえたBCPの重要性について改めて考えたいと思います。

策定が進むBCP

帝国データバンクが2020年5月に行った調査によると、BCPを「策定している」と回答した企業は16.6%となり、前年より1.6ポイント増加しています。さらに「現在、策定中」「策定を検討している」と回答した企業も増加しています。これらは帝国データバンクが調査を始めて以来最も高い数字ということで、BCPに対する取り組みは全体で見ても増加傾向にあります。ただし大企業においては30.8%が既に策定している一方で、中小企業では13.6%に留まっており、企業規模で大きな差がついています。

どのようなリスクによって事業の継続が困難になると想定しているか、という質問に対しては、この数年増えている台風やそれに伴う河川氾濫などの被害の影響など「自然災害」と回答した企業が70%を超えています。また2019年と比較すると、「感染症」と回答した企業が24.9%から69.2%と大幅に増えました。さらに「取引先の倒産」が39.0%、「取引先の被災」が31.7%と自社だけでなく取引先も含めてリスクを考えている企業が多いことが分かります。

では、BCPを策定する際に、どのような内容が検討されているのでしょうか?

最も多いのが「従業員の安否確認手段の整備」(67.3%)でした。2位以降は、「情報システムのバックアップ」(52.6%)、「緊急時の指揮・命令系統の構築」(46.5%)、「多様な働き方の計画」(40.4%)、「事業所の安全性確保」(38.2%)「調達先・仕入先の分散」と続きます。「多様な働き方の計画」は2020年の調査から回答項目に含まれたものですが、検討している企業が4割を超えているということから、「働き方改革」への対応が進んできていると考えられます。

いずれにしても、事業継続に支障をきたすような不測の事態が発生した時にどのように対応するかについては、平時に計画を策定しておくべきでしょう。そして計画を実施するような事態が発生した後は、必ず振り返りを行い、その都度計画を見直す必要があります。

BCPのメリットと策定時に想定すべきリスク

スーツを着た人とプラスマーク

不測の事態に備え、そのような事態が発生した時でも事業を継続することを目的に、ケースバイケースで対応方をまとめたものがBCPです。企業にとってBCPを策定しておくメリットは極めて大きいと言えます。

BCP(事業継続計画)による経営改善のススメ」では、BCPを策定するメリットとして以下ご紹介しています。

  • 業務プロセスを見直す機会になり、効率的な方法への改善が図れる
  • BCPの策定・運用を行っている点をPRし、信頼を高めることができる
  • 業務のデジタル化を進めることができる
  • スタッフのスキル向上につながる

既にご紹介した帝国データバンクの調査でも、BCP策定の効果となり得る項目が挙げられています。その中で、20%を超える企業が「BCP策定の効果」と捉えている項目は以下の通りです。

  • 従業員のリスクに対する意識が向上した
  • 事業の優先順位が明確になった
  • 業務の定型化・マニュアル化が進んだ
  • 業務の改善・効率化につながった
  • 取引先からの信頼が高まった

前述の「どのようなリスクによって事業の継続が困難になると想定されているか」については、自然災害、感染症、取引先倒産・被災が上位でしたが、これらも含めてBCP策定時に考慮すべきリスクのカテゴリーを列挙します。

  • 地震、台風、洪水など自然災害
  • 感染症・伝染病
  • 火災、停電、通信障害など事故・障害
  • 人材の過不足、社員の士気低下、労災、メンタルヘルスなど人事・労務関連
  • コンピュータの停止、データの喪失など情報システムエラー
  • 機械の操作ミス、受発注ミス、誤配送など人的ミス
  • 取引先への不当行為、製造物責任など法務関連
  • テロ、法改正、金利・為替変動など政治・経済関連
  • 不正や内部統制違反

感染症対策を踏まえたBCPとは?

自宅からウェブ会議に参加する男性

すでに見てきましたように、BCPを策定する際に考慮すべきリスクは多岐に渡ります。ここでは、「想定しているリスク」と回答した企業が昨年から大幅に増えた「感染症」への対応に絞って考えてみたいと思います。

感染症の場合、社会インフラが機能しなくなることを前提に計画する必要がある自然災害の場合とは異なり、基本的に社会インフラは機能しています。もちろん社会インフラも人の手によって運営されているので、停止するリスクが全くないわけではありません。しかしそのような確率は極めて低いと考えていいでしょう。

基本的な考え方としては、以下の3つが挙げられます。

  • 情報システムを含めた業務環境を構築すること
  • 業務を遂行する社員の感染予防に努めること
  • 感染予防のための新しいスタイルの働き方を積極的に導入すること

社内においては、ワーキングスペース内で社員同士が密にならないようにしたり、同じ部署のメンバーを物理的に分散した場所に配置しながらも、業務が中断されないようにするなどの工夫が必要となります。時差勤務や週休日の振替などの方法で、多くの社員が一度に集まらないようにすることも有効です。手洗い、うがい、消毒、換気、および検温等の健康チェックの励行を呼びかけることも大切です。社員の感染が疑われる時にはどうすべきかマニュアル化しておく必要もあるでしょう。

「新しいスタイルの働き方」としては、在宅勤務やサテライトオフィス、ウェブ会議などを積極的に導入し、社員の利用を推進することです。

感染症対策を踏まえたBCPに関する取り組みを公表している自治体もありますので、これから策定しようと考えている企業や見直しを検討している企業は参考にしてみてはいかかがでしょうか。

参考:「新しい生活様式」を踏まえた職場における感染予防について(宮城県庁総務部)

まとめ

企業として、従業員やお客様を守るためにもBCPは必要不可欠なものとなりつつあります。そして、BCPは様々なリスクを想定して策定し、都度見直しをする必要があります。一度策定したら完成ではありません。実行してみると、計画時には気づかなかったことが起こり得るからです。

また、BCPを考える際に、テレワークの環境を整えることは必須と言っていいでしょう。テレワークにおいては、社員が出社できない場合だけでなく、社員が自宅で働くことができない状況も想定し、在宅勤務以外のサテライトオフィスやモバイルワーク環境の構築についても検討し、場所がどこであれ業務が継続できる仕組みを考えておきましょう。

テレワーク最前線シリーズ1:きちんと理解できていますか? – テレワークの基礎知識」では“テレワーク導入の流れ”をご説明しましたが、テレワークをスムーズに進めていくためには、ICT機器やツールを整え、企業と従業員が気持ちよく働けるようルール等を策定し、また電子署名ソリューションで紙の文書をデジタル化するなど、多面的に検討していくことが大切です。

 

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筆者
安達 智洋
シニア・コンテンツ・マーケティング・マネージャー
公開
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