8時間労働や週休2日はいつから? 働き方の歴史から「働き方改革」まで!

外を歩く二人の女性

時代の変化とともに、私たちの働き方も変化しています。それまで「常識」だと思われていた働き方が見直され、法改正につながり、労働の在り方が変わってきました。そんな「労働にまつわる常識」にはどのような歴史があるのでしょうか。「8時間労働」「週休2日制」「残業規制」「フレックスタイム制」などの導入の背景や意義を振り返りながら、これからの『働き方』について考えてみませんか?

労働者保護の歴史は大正時代からはじまった

日本の「働き方」を決めている最も基本的な法律が労働基準法です。労働基準法は戦後すぐ、昭和22年に制定されました。しかし、労働基準法が日本ではじめて制定された労働者保護のための法律というわけではありません。

大正5年(1916年)、今から100年以上前に「工場法」(明治44年制定)という労働基準法の前身ともいえる法律が施行されました。とはいえ、その対象は「危険または衛生上有害な一定の工場で、常時15人以上を使用するもの」に限られていました。

労働者保護の内容も、現代の感覚からは大きな乖離があります。たとえば、下記のような労働時間や休日についての規制は15歳未満の者と女子だけが対象だったのです。

  • 最長労働時間12時間
  • 深夜業(午後10時から午前4時)禁止 ※例外と長期の適用猶予あり
  • 6時間を超えるときは30分、10時間を超えるときは1時間の休憩
  • 休日の基準は毎月2回以上

これらの基準は、成人男性をはじめとした対象外の労働者には該当されず、労働者保護に関する規則は個々の事業所に任されていたのです。今では考えられない内容ですが、欧米に倣って次々に産業が興った時代、「女工哀史」のルポルタージュで世に知られた社会問題が世論を動かし、十数年かけてやっと成立した「工場法」から日本の労働法はスタートしたのです。

そして、終戦から2年後の1947年に「労働基準法」が制定され、これまで数回の大きな改正を経て現在の労働基準法となりました。本ブログ記事では、その中でも労働者の毎日の働き方に大きく関わる重要なポイントである、

  • 8時間労働制
  • 週休2日制
  • 残業の上限規制

をピックアップして紹介します。

参考:厚生労働省 広報誌「厚生労働」/ 女工哀史 (岩波文庫 青 135-1)1980/7/16出版 細井 和喜蔵 (著)

「8時間労働」のスタートは1947年

労働時間についての規定は、労働基準法第三十二条に定められています。これまで、何回かの労働基準法改正の「大きな目玉」として段階的に削減されてきました。

【1947年(昭和22年)制定】

労働基準法が初めて制定された当時、労働時間は「1日8時間、週48時間」からスタートしました。1日の労働時間は今と変わりませんが、週に48時間、つまり実質的に「週休1日」であり、多くの会社では日曜日のみが休日でした。

【1987年(昭和62年)改正】

それまでの「週48時間」から「週40時間」と大幅に法定労働時間を減らすことが本則に規定されました。しかし、この年から実際の労働時間が一気に変化したわけではありません。「労働時間などに係る暫定措置に関する政令」によって、数年おきに段階的に労働時間を減らしていくことになったのです。業種や企業の規模などに応じ、社会はゆっくりと週40時間労働へ移行していくことになります。

【1993年(平成5年)改正】

1987年の改正と同時に制定された政令によって段階的な労働時間削減が行われ、1993年の改正で本則通り週40時間労働制が実施されることになりました。

なお、一定の業種については現在でも特例措置として週44時間労働が認められています。

一定の業種とは…パートアルバイトを含む常時10人未満を雇用する事業所で、商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業の事業。具体的には小売、理美容、病院、社会福祉、旅館、飲食など)

参考:厚生労働省 労働時間法制の主な改正経緯について

誤解されがちな「週休2日制」と「完全週休2日制」の違いとは?

休日を公園で過ごすファミリー

仕事を探す際に気になるポイントの一つが休日に関する情報。求人票に「週休2日制」「完全週休2日制」と書かれているのを見たことがある方も多いと思いますが、その違いをご存知でしょうか。

  • 週休2日制:1ヶ月のうち、1週でも2日連続の休みがあること。
  • 完全週休2日制:毎週必ず2日間の休みがあること。

いわゆる「カレンダー通り」と言われる土日祝日休みは、「完全週休2日制」を指します。逆に、たとえば「平日7時間労働、毎月第4土曜日は半日出勤」という場合は「週休2日制」という表記をしなければなりません。

なお、「週休2日制」「完全週休2日制」は、実は法律で定められた制度ではありません。法律が定めているのは「毎週少なくとも1回又は4週間を通じ4日以上与えなければならない」(労基法第35条)というものです。つまり、「週休1日」が法で定められた最低限の休日です。

しかし、1日8時間労働であれば、実質的に「週5日」が上限になります。そのため、多くの会社が「1日8時間労働・週5日勤務」となっているのです。8時間労働&週40時間労働制が決まった瞬間に「完全週休2日制」も決まったと考えてよいでしょう。

参考:労働基準法「第4章 労働時間、休憩及び休日」

残業の上限規制が始まったのは2019年!

2018年(平成30年)のいわゆる「働き方改革関連法」改正の柱のひとつが「時間外労働の上限規制の導入」です。大企業は2019年(平成31年)4月1日施行、中小企業は移行措置として2020年(令和2年)4月1日から施行されました。

実はそれまで、法律上では残業時間の上限はありませんでした。「月45時間/年360時間」を上限とする厚生労働大臣告示による行政指導があるのみだったのです。さらに、年間6ヶ月までは実質的に上限がない状態でした。というのも、「臨時的に(年6ヵ月まで)」「特別の事情が」ある場合には、特別条項付きの36協定を締結することで、限度時間を超えて時間外労働を行わせることが可能だったからです。

時間外労働の上限規制

これを、2018年の改正労働基準法第36条5項で「原則として月45時間・年360時間」とし、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできないと規定しました。

「臨時的な特別な事情」とは、例えば「決算業務」「ボーナス商戦など繁忙期」「一時的なトラブルやクレーム対応」を指し、年間で半年を超えての適用は認められません。これらの事情が認められ、労使の合意がある場合でも、「月100時間未満・複数月平均80時間未満・年間720日」という上限を超えることはできません。違反した場合、「6か月以上の懲役または30万円以下の罰金」という罰則が規定されています。

労働時間の規制強化と同時に、より多様で柔軟な働き方を実現するため、フレックスタイム制の規定見直しや、特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設が行われました。働く時間と仕事の成果が必ずしも連動しない業務において、労働時間を厳しく管理することの是非やサービス残業の温床であるとの指摘がある「みなし労働制時間制」の課題など、まだまだ日本の長時間労働については改善の余地があります。働き方をより良いものにするための環境整備の取り組みは、今後も継続していくでしょう。

まとめ

労働法は時代の変化とともに進化してきました。2019年4月から順次施行がはじまった「働き方改革関連法」では、単に「働く時間」だけでなく、生産性の向上や業務効率化について取り組むことが求められています。

また、コロナ禍が多様な働き方の導入を一気に推し進めるきっかけともなり、ペーパーレス化による業務効率の向上やHRテックを活用した人事管理システムの導入など、さまざまな「多様性のある働き方」を支える動きが加速しています。過去の経緯を知ることで、「これからの働き方」に何が求められているか、どう変化していくのか考えるヒントを得ることができるかもしれません。

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筆者
安達 智洋
シニア・コンテンツ・マーケティング・マネージャー
公開
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