ESIGN法が切り開くデジタル革新への道

Past, Present to Future

2020年6月、米国で「ESIGN法(Electronic Signatures in Global and National Commerce Act)」が制定されて20周年、そして10回目の「National ESIGN Day(米国電子署名の日)」を迎えました。

わずか20年前、ビジネス文書に署名をもらうには、直接会うか、あるいは郵送、ファックス、スキャナー、コピー印刷などを駆使した、紙も時間もたくさん使う方法しかありませんでした

弊社ドキュサインのシニアバイスプレジデント兼法務顧問、トラム・フィーは「ESIGN法は、同じ意義をもつ州法である統一電子取引法(UETA)と相まって、厄介な手作業による契約手続きや承認手続きを、迅速で効率的な自動処理へと変えることで、米国のビジネス慣行を一変させました。20年前にこの基礎を敷いたのは、先見の明があったと言えます。これによって、多くの企業はコロナ禍で加速するテレワークを迅速に取り入れることができているのです」と話します。

ESIGN法がいかに先見の明のあるものであったかは、iPhoneが初めて世に出たのが2007年1月であり、Airbnbに代表されるような民泊が概念化されたのもその年であったことを考えれば理解できることでしょう。ESIGN法は、Salesforce.com設立(1999年)のわずか1年後に制定されましたが、その時点ではまだTesla(2003年)もUber(2009年)も創業していませんでした。

今日では、個人がなんの抵抗もなくオンラインで取引することが可能です。次の休暇のためにホテルやレンタカーを予約したり、ペーパーレスであっという間に契約ができたり、新しく銀行口座を開設したり、ギグエコノミーで単発仕事を請け負ったり、それらすべてをスマホなどから電子的に処理することができるのです。

現代の消費行動以外においても広範囲に活用される電子署名は、従来の契約手続きで消費されてきた紙の量を削減します。ドキュサインの推定では、2003年の設立以来、当社は世界中で200億枚以上の紙をデジタルに置き換えることで、紙を作るために必要な250万本以上の木をお客様と共に保護しています。

電子署名はどのようにして法制化されたか

「米国連邦政府のESIGN法は、多くの法制定でみられるような「後手」の法案ではなく、「先手」の法案であった点が特殊でした。単に既存の慣行にお墨付きを与えるための法案ではなく、eコマースの開発・拡大が徐々に進むよう、その支援を目的とした法案だったのです」と、法令の制定に携わったひとりである、DLAパイパー共同経営者のデイビッド・ウィテカー氏は言います。

一貫性をもたせて州レベルで使いやすくするために、統一州法に関する国家委員会(現在では「統一法委員会」と言われている)が、1999年に「統一電子取引法(UETA)」を採択しました。UETAは少数の州からは非常に迅速に採択されましたが、適用例外もあったために、州のなかには矛盾ができてしまうところもありました。これに対処すべく連邦政府が乗り出し、「ESIGN法」を2000年に成立させました。ESIGN法はUETAをモデルにしており、同じ主要要素を打ち出しています。

  • 契約は、それが電子書式であるという理由のみで法的効力や法的強制力を否定されるものではない
  • もし法律が書面記録を必要としている場合にも、電子記録はその法を満たす
  • もし法律が署名を必要としている場合にも、電子署名はその法を満たす

「UETAの起草者たちは、世の中に革新を起こし、それに適応するために必要な法律を作成していることを理解しており、柔軟性やテクノロジーにおいて中立性をもたせるべく、最新の注意を払っていました。ESIGN法の可決を目指していた私たちは、そこに注意を払うことの重要性を認識しており、それはESIGN法にも受け継がれました。結果として、ESIGN法は非常に順応性の高いものになったのです」とウィテカー氏は当時を振り返ります。

ESIGN法は、国家統一法としてすべての電子取引に適用され、電子署名、電子契約、電子記録を使う際には当事者たちがその基準に従いさえすれば手続きに信用が付与されることになり、それらの活用を促進しました。ウィテカー氏が指摘するようにESIGN法は、書類の提出や署名に関する何十種類もの手法を電子的に確証してきました。リモートでも対面でも、チェックボックスからブロックチェーン遂行の二重暗号化やスマート契約まで、なんでも使えるようにしてきました。

この革新的なテクノロジーの採択は一夜にして実現したわけではなく、また革新が終わったわけでもありません。

電子署名とデジタルでの合意

法案通過に密接に関わったDLAパイパー共同経営者であるマーゴ・タンク氏は、次のように述べています。「連邦法であるESIGN法の制定は、現代のビジネスに必要不可欠なインターネットが著しく成長するには、国の基準として極めて欠かせないものでした……今日では電子署名が存在しないマーケットプレイスなど想像もできません」。

ESRA(Electronic Signature and Records Association)によれば、eコマースは2000年から劇的に成長しており、今では米国小売り販売の10.7%を占め、その数値は今後も伸びると予想されています。その中心に位置するESRAは、ESIGN法の制定後、電子署名やその他の電子商取引をどのように実行に移すかを考案するために設立されたものである、と現会長のハリー・ガードナー氏は言います。簡単で安全、且つ合理的な電子取引の使い方を考案し、私たちがデジタル化への道を進めるようにするために、協会のメンバーたちが非常に重要な役割を果たしたのです。

ESIGN法が可決されて以降、さまざまなビジネスシーンで電子署名を活用していくために、その法的強制力や有効性を支援すべく、一連の判例法が生まれました。

電子署名の未来

電子署名や電子契約の信頼性は今では一般の人々からも認められるようになった一方で、やらなければいけないことはまだまだあります。ビジネスやテクノロジーの先駆者たち、立法者や規制者たち、そしてさまざまな政府機関が、さらなる適用への道を開いてくれています。特にコロナ禍に立ち向かうために、さまざまな取り組みがなされています。以下の例は、電子署名の適用や妥当性を上げるためにドキュサインが携わってきたいくつかの取り組みです。

  • 中小企業庁(SBA)支払い補償プログラムにおける中小企業事業融資への効果的な適用
  •  ニューヨーク労働局に提出される何十万人もの失業保険の申請をデジタル化
  • 遠隔でのオンライン公証の採用に関して、地方自治体、州、政府、企業や業界団体と直接提携
  • 保険福祉省(HHS)などの連邦政府機関と連携し、特定書式における電子署名の活用拡大を呼びかけ
  • 世界中の政府機関や業界団体に働きかけ、電子署名についての理解と採用を促進

この記事を執筆するにあたり、私たちがインタビューした多くの人々が指摘するように、連邦法であるESIGN法、そしてそれと同意義をもつ州法のUETA法が制定されていなかったとしたら、「……現在の商取引は現在の形で存在していなかった(デイビッド・ウィテカー氏)」、そして「……コロナ禍でのビジネスはほぼ不可能(マーゴ・タンク氏)」であったことが容易に想像できます。

そういった意味でも、ESIGN法の制定から20周年を迎えた今年は、一つの大きなマイルストーンと言えるでしょう。

次回は、ESIGN法が制定されてから現在に至るまで、業種・職種を超えてどのように電子署名が活用されるようになったかをご紹介します。

<おすすめ記事>

・ 電子契約関連の法律まとめ 〜電子署名を安心して利用いただくために〜
・ ドイツおよびヨーロッパにおける電子署名の適法性

※本ブログは米国ドキュサイン本社のブログ記事「ESIGN Act - Paving the Way For Digital Innovation」の抄訳です。

免責事項:このサイトの情報は一般的な情報提供のみを目的としており、法的助言を提供することを意図したものではありません。電子署名にかかわる法律は急速に変更される可能性があるため、ドキュサインはこのサイト上のすべての情報が最新であることまたは正しいことを保証することができません。このサイトの情報について特定の法律上の質問がある場合には、弁護士にご相談ください。

Contributeur DocuSign
筆者
Docusign
公開