20周年を迎えたESIGN法 〜業種・職種を超えた電子署名の活用〜

man and woman in office

今から20年前の2000年6月、電子署名に関する一貫性のある基準の必要性の高まりに応えるために、「ESIGN法(Electronic Signatures in Global and National Commerce Act)」が米国で可決されました。ESIGN法に基づき、電子署名は米国において連邦レベルで従来の直筆の署名と同じ法的効果を持つものとして認められました。

ESIGN法で認められていること

  • 法律で認められる署名が、電子署名でその要件を満たせること
  • 電子署名された契約を証拠として裁判所に提出できること
  • 電子署名された文書の有効性や法的強制力が、その電子的形式だけで否定されないこと

この法律が可決されて以来、世界中の企業はビジネス変革を押し進めるために電子署名を採用しています。また、日本においても電子署名は適法であり、電子署名でDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する企業は増加傾向にあります。

業務や職種を超えた電子署名の活用

不動産業界を変革した電子署名

ドキュサインの電子署名(製品名:DocuSign eSignature)がリリースされた当時、不動産業界はこの新しいソリューションを活用した最初の業界の1つでした。

不動産仲介会社Keller Williamsの共同創設者兼CEOであるGary Keller氏は、「不動産業界を変革する」というビジョンを持っていました。面倒で複雑な取引や顧客の手間を知ったKeller氏は、デジタル技術を活用して不動産売買の方法を変革しました。Keller Williams社はドキュサインの製品を利用して顧客へのサービスを改善し、それを中心とする首尾一貫した顧客体験を創生したのです。

電子署名は、より速く、より正確で透明性の高い取引プロセスを生み出し、不動産業界に革命をもたらしました。そのおかげで当社は、山積みになった紙の書類を処理するかわりに、顧客とのコミュニケーションに時間を使うことができ、またコンプライアンスの要件を満たしていることに対して自信を持つことができます。

Bob Goldberg、National Association of Realtors®、CEO

最終的には軋轢のない業務プロセスを構築し、買い手、売り手、仲介業者が同じ契約システムを使用して、全体の取引を管理しています。現在では、代理店数、販売件数において、Keller Williams社は世界最大の不動産フランチャイズとなっています。

営業担当の顧客訪問回数を1/2に低減

Comcast Business社の戦略でコアとなるのは、顧客を訪問する現場の営業担当です。このモデルでは、地域のビジネスコミュニティとのつながりは生まれましたが、担当者は取引がまとまる度に事務所に戻って契約書を印刷し、署名を得るために顧客を再度訪問する必要がありました。そのため業務時間が倍増し、印刷、ファックス、画像の取り込み、書類整理に係るコストを押し上げていました。

この営業プロセスを刷新するために、Comcast Business社は、現場の営業担当にタブレット、販促グッズを用意し、ドキュサインの電子署名が使えるようにしました。上席副社長のTerry Connell氏は「ドキュサインのおかげで、営業担当は顧客を訪問し、その場で提案書や契約書を作成して直ぐにタブレット上で署名をもらうことができます。つまり、1度の訪問で契約を締結することができます。」と述べています。その結果、新規顧客を獲得するまでの訪問回数を平均で50%以上減らすることができ、その時間をもっと多くの新しい顧客と会うために有効活用しています。

人事部のオンボーディング手続きを効率化

Facebookの人事チームは、1週間当たり約50人の新入社員をオンボーディング(入社手続き)するために、チーム全体の業務時間の約60%を費やしていました。その業務の中心は、新入社員が手書きで記入し、人事部と経理部に手渡ししていた紙の書類でした。これらのマニュアル作業は非効率的であるだけでなく、データの誤りや遺漏、不一致の原因にもなっていました。

Facebookは書類を処理するプロセスを改善するために、DocuSign CLMを採用して全てのプロセスをクラウドに移行し、人事関連書類を容易に検索できるリポジトリを作成しました。ドキュサインは、SalesforceやWorkday、ADPなどの既存の情報システムと統合されているので、わずか4週間弱で導入することができました。新しいプロセスでは内定通知は電子化され、入社時に必要な全ての書類を確認・署名ができる新入社員向けのオンライン・ポータルが利用されています。

オンライン手続きや遠隔での契約が可能に

ESIGN法の施行から20年目に当たる今年、世界は新型コロナウイルス感染症と戦っています。各国政府は迅速に国民のニーズに応える努力をしています。このような状況下では、時に従来のプロセスを変える必要性も出てきますが、その間、公共サービスを中断することはできません。

パンデミックが発生した最初の数か月間で、政府・自治体はドキュサインの電子署名を利用して、その幅広い日常業務を遠隔で管理するようになりました。そうした業務には、契約業務、請求書処理、タイムシート、医療同意書、サプライヤー契約、教育プログラム、法的手続き等が含まれていました。また、ドキュサインは、医療品調達での注文、退役軍人保険、失業給付などに関わる新たなニーズにも対応しています。

紙の契約書や印刷、郵送などのマニュアル作業を削減

American Healthcare Lending(AHCL)社は、医療サービス提供者と契約して、患者と資金提供先を仲介する技術プラットフォームを提供することにより、「全ての人が医療サービスを利用できるようにする(Make Healthcare Affordable™)」ことを使命としています。AHCL社は、これらの契約を20~30ページにおよぶ紙の契約書で管理しており、印刷、ファックス、署名、画像取り込み、郵送等のマニュアル作業が必要でした。COOのNick Sorensen氏は、DocuSignとSalesforceの連携ソリューションを組み合わせたデジタルプロセスでこの問題に対処しました。

新しい契約ワークフローは、紙の業務に伴うコストを削減し、マニュアルで行っていた作業の手順を自動化することで処理スピードを加速させ、契約の正確性を確保しました。AHCL社はDocuSign eSignature for Salesforceを導入して以来、年間2,500件以上の取引をオンラインで完了しており、1契約当たり90ドル以上を節約しています。さらに、販売契約以外にも、人事プロセスや販売提携プログラム、従業員のオンボーディング、製品開発プロセスなどに電子署名の利用を拡大しました。

デジタルトランスフォーメーションと電子署名

Refinitiv社は、金融市場データを提供する世界最大級の会社です。この業界は動きが速く、手渡し、手作業による画像データの取り込み、ファックス、直筆の署名など、マニュアル作業による非効率性やミスが営業担当者を悩ましていました。

Refinitiv社はDX(デジタルトランスフォーメーション)を達成するために、ドキュサイン製品とSalesforceの統合を中心とするプロセスを構築し、これにより従業員にはワークフローの簡素化、顧客にはスピードと透明性がもたらされました。これにより、顧客体験を20%向上することができました。

Refinitiv社のDX担当ディレクターEileen Kelly氏は、「ドキュサインを使っていなければ、営業担当者は締め日までに売上を計上することはできませんでした」と述べています。

まとめ

ESIGN法が可決される以前、組織・団体は重要な文書への署名の求め方をはじめ、ビジネスをどう効率よく回していくべきか分からないまま、新しいデジタル技術を採用していました。また、電子商取引へのシフトが起きていることを認識していましたが、電子署名に関する一律の規制を作る試みは、例外や矛盾が多すぎるため、州境を越えた規模で効果を発揮することはありませんでした。

しかし、ESIGN法がこれらの問題を解消し、ドキュサインの電子署名のような革新的なツールのためのガイドラインが確立、企業とその顧客は取引を根本的に簡素化できるようになりました。

アメリカでESIGN法が制定されて20年。このような節目は、継続的に進化していくデジタル技術にどうビジネスを順応させていくか、そして何ができるのかを考えるよい機会になるのではないでしょうか。

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※本記事は米国ドキュサイン本社が2020年6月30日に公開した「20 Years of ESIGN Act」の抄訳です。

Contributeur DocuSign
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