お客様事例に学ぶ!電子署名を活用したDX戦略

印刷や製本、送付などのマニュアル作業から解放し、在宅勤務や出張時の押印対応を可能にする電子署名サービスは、紙の文書と付随する業務プロセスを電子化するソリューションとして近年注目を集めています。

2022年10月に開催した特別ウェビナー『パソナと共に考える〜電子署名の現状とDX推進への解決法〜』では、株式会社パソナ 専務執行役員 セールスサポート・オペレーション本部長の藤枝朋子氏をお迎えし、ドキュサイン・ジャパンのカントリーマネージャー竹内賢祐と電子署名の現状およびDX推進についてディスカッションを行いました。本記事では、ウェビナーの内容をもとに、パソナの事例を参考にしながら、電子署名を円滑に導入するポイントや電子署名を活用したDXの取り組みについて掘り下げていきます。

パソナ藤枝氏とドキュサイン竹内のプロフィール写真

なお、ウェビナー内で紹介している調査レポート『電子署名レポート2022』は、以下リンクより無料でダウンロードいただけます。

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『電子署名レポート』をひも解く!パソナが考える電子署名とは

株式会社パソナは、社会の問題点を解決するという企業理念のもと、1976年に設立されました。現在、パソナグループは全66社で構成されており、人材ビジネスに限らず地方創生事業や福利厚生の代行事業など幅広くビジネスを展開しています。また、グループ全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進においては、社内のデジタル基盤の整備だけでなく、デジタル人材の育成やDXサービスの展開にも注力しています。

同社はパソナグループの中で人材ビジネスを中心に事業を展開しており、藤枝氏が所属するセールスサポート・オペレーション本部では、特にバックオフィスのDXを積極的に進めています。2017年にドキュサインの電子署名を導入して以降、さまざまな成果を上げている同社の経験や知見をもとに、『電子署名レポート2022』をひも解いていきます。

ウェビナーで対談するドキュサイン竹内とパソナ藤枝氏

紙の書類のデメリット

今回の調査では、紙の書類のデメリットとして「膨大な紙の契約書などの書類を管理するスペース」や「煩わしい印刷や製本、スキャンなどの手作業」「在宅勤務、出張、出先にいた際に、すぐに対応できないこと」が上位を占めています。

藤枝氏は、紙でやりとりしていた時代にはスピードが遅いことや保管に関する課題があり、「クライアントからすぐに契約書が欲しいと言われると、紙の場合は郵送か、営業がお届けするしかなく、どうしても時間がかかってしまうことが課題でした。また膨大な保管スペースが必要なことも大きなデメリットでした」と振り返ります。同社では全社的に推進しているWeb化・ペーパーレス化の一環として電子署名を導入し、現在では「スピード」や「保管スペース」といった課題を解消しています。

電子署名サービスの利便性

電子署名サービスを利用したことのある方の多くがその利便性を感じており、「大変便利だと思う」「便利だと思う」「どちらかというと便利だと思う」を合わせると9割近い方が便利だと考えています。

実際に旅行していた際に電子署名を利用したことがあるという藤枝氏は、「(合意・契約文書を)電子化することによって、どこにいても仕事ができるというのが全体的なメリットだと思います」と話します。

ビジネスシーンにおける電子署名の利用意向の変化

ビジネスシーンにおける電子署名の利用意向について、2021年の調査では「大変利用したい」「利用したいと思う」「どちらかというと利用したいと思う」の合計が71%だったのに対し、2022年は88%まで上昇しています。

パソナの取引先における電子署名の受入状況について、藤枝氏は「導入当初は締結式の契約書に関しては非常に低く5%あたりでしたが、コロナ禍があり、政府もDX推進や働き方改革を進める中で、少しずつ意識が変わってきているように感じます。ここにきて25%ぐらいまで右肩上がりで上がってきているので、これからさらに増加していくのではないかと考えています」と分析します。

また、弊社竹内は「日本における電子署名の導入率は約3割弱と言われていますが、今回の調査結果を踏まえると、今後加速度的に伸びていくと私たちは考えています」と付け加えます。

電子署名サービスのメリット・効果

電子署名サービスを導入するメリットや効果としては、「在宅勤務/テレワークの拡大」「承認ワークフローなど事務処理の効率化」「保管・管理の効率化」が上位に並んでいます。

実際に電子署名サービスを利用しているユーザーとして、現場からはどのような声があがっているのでしょうか。藤枝氏は「私たちの部門には、お子さんがいらっしゃって(毎日の)出勤が難しいという方も多くおり、電子化によって自宅で仕事ができるというところに非常に効果を感じています。(電子署名の導入により)とても働きやすくなったという声が多く聞かれます」と評価します。

数年前に本社機能を兵庫県の淡路島に移転した同社ですが、バックオフィス業務については主に3カ所(+在宅勤務)で行っており、災害時などのBCP(事業継続計画)の観点からも電子署名は有効であると補足します。

電子署名サービスのデメリット・課題

一方、電子署名サービスの導入に対してデメリットや課題を感じている方もいます。今回の調査では、「紙との並行利用になり、煩雑になっている」との回答が最も多く、「ユーザビリティがよくない」「契約先への手続き方法などの説明や対応が面倒」が続きます。藤枝氏は、紙との並行利用になる時期があるのは仕方ないとしつつ、「まずは始めなければ何も変わらないので、そこは将来のための努力と考えて取り組んでいます」と話します。

また、藤枝氏はサービスの可用性についても触れています。ドキュサインの電子署名はメンテナンスによるダウンタイムがなく、実際に過去数年の実績稼働率は99.99%以上を誇ります。そのため、時間にしばられることなく、スムーズに合意・契約プロセスを進めることができます。

電子署名サービスを導入しない理由

現在、電子署名を導入している企業・自治体は約3割、検討段階にある企業・自治体は3割強になります。残りの4割弱は「現在のところ導入の考えはない」と回答しており、その理由として「会社の体質が、未だ紙文化であるため」「導入効果、費用対効果が見えないため」「会社にいまだにハンコ文化が根強く残っているため」など、紙・ハンコ文化が残っているといった指摘が多くあがっています。当初、パソナでも同じような意見がありましたが、「印章・捺印規程、文書管理規程などの変更や、他部署からの質問など、一つひとつ丁寧に対応しました。一方、当社の場合はトップダウンで電子化に向けて動くことができたため、電子化するために何を変えるべきかをメインに議論しました」と藤枝氏は話します。

DXのような大きな変革を進めるには経営陣の大号令も重要ですが、取り組みを定着化させるためにパソナではどのような工夫をしているのでしょうか。

「例えば、電子化が進んでいる部門に対してはインセンティブをつけるといったことも行っています。また、クライアント企業との交渉については、営業部門にお願いしてもなかなか難しい側面もあります。そのため、私たちの部門の契約担当が代わりに電子化の進め方やメリット、ドキュサインの使い方などを説明することもありました。意外と営業が交渉するより受け入れていただけることもあり、そういった活動も効果があったと思います」。

パソナの事例に学ぶ!電子署名を活用したDX推進の取組み

パソナの人材派遣ビジネスのコアとなるのは、仕事と人を結びつけること。クライアント企業、派遣スタッフ双方との契約手続きが必要となりますが、この時に必要となるさまざまな手続きでドキュサインの電子署名を活用し、効率化を図っています。

Web化・ペーパーレス化を背景としたパソナのDXの取り組みの経緯は以下のようになります。

  • 2013年5月 紙のタイムカードをWeb化
  • 2013年秋 紙の給与明細・健診案内・各種書類をWeb化
  • 2014年11月 紙の請求書をWeb化
  • 2017年6月 期間抵触日通知をWeb化
  • 2018年7月 スタッフ誓約書をWeb化
  • 2019年10月 スタッフ個別契約書をWeb化
  • 2020年4月 企業個別契約書をWeb化
  • 2021年2月 企業締結式契約書をWeb化

2017年6月、同社は「期間抵触日通知」で初めてドキュサインの電子署名を導入し、最初は書面記入・書面保管だったものを書面記入・PDF保管に切り替え、その後、電子署名を活用して記入・署名から保管まですべてを電子化しました。

その後も段階的に電子署名を導入していく同社ですが、電子化を進める上で苦労した書類の一つに「スタッフ誓約書」があります。スタッフ誓約書は、人材登録するすべての人が締結するもので、毎月3,000~4,000件も交わされる誓約書を何十年にもわたって保管しなければなりません。「私がバックオフィスを担当していた当時、佐賀の倉庫に200箱分の書面が保管されていました。メンバーから押印の依頼や、保管料(の支払い)、PDF化に関する決裁を求められるのですが、調べたところ、PDFを保管しているにも関わらず、原本も保管していました。なぜ原本を置いているのか質問すると“訴訟が起きたときに原本があった方が強いらしいです”という回答だったのですが、訴訟があって原本が必要になったケースは10年間でたった1回でした。そこで、その200箱分の書面をすべて処分することにしましたが、個人情報が含まれるので処分料も軽視できないものでした。ただ、続けているとさらに増えていく紙をまた何十年も保管し続けなければならないため、これを機にすべてドキュサインに切り替えました」と藤枝氏は振り返ります。

また、「企業締結式契約書」は相互捺印が必要で、1部ずつ押印したものを両者が保有するため、なかなか切り替えにくく、最後まで手をつけられなかったと話します。2020年3月、コロナ禍で在宅勤務の覚書が必要となり、当初は書面を作成してクライアント企業と派遣スタッフに郵送していました。しかし、一部の社員が書類を作成するためだけに出社しなければならなかったため、まずは同年5月にドキュサインの電子署名を単体で導入。その後、2021年2月に(同社が使用する)システムとの連携が完了し、現在は相互捺印が必要な書類もそのままシステム上で送信する形で運用しています。

具体的な成果については、「個別契約書の場合、郵送では3日~4日ほどかかっていましたが、現在では1日に4回(システムに)アップロードされ、だいたい2時間から3時間くらいで契約書をクライアント企業に送信しています。また、派遣スタッフはマイページ上にアップロードされた自分の契約書をスマートフォンなどからいつでも確認できます。私たちのビジネスにおいては、このスピード感が電子化をしたことによる最大のメリットだと思います」と藤枝氏は語ります。

電子署名について語るパソナの藤枝朋子氏

DXは一朝一夕で実現できるものではありませんが、課題意識を持ちながら、堅実にDXを推進している同社。パソナにとってDXとはー。そしてDXを継続的に推進していく秘訣は何なのでしょうか。

「当社も苦労しながらDXに取り組んでおり、まだ道半ばです。DXへの取り組みは、DXをすることが目的ではありません。DXは単なるツールであって、どう働き方を変えていくのか、お客様に対するサービスをどう向上させていくのかといった、DXのその先で何をするのかという点が重要です。DXへの取り組みが充実化していくと、毎日出社できない方や、介護をしている方、子育てをしている方、さまざまな背景がある中で、自分のペースに合わせて仕事ができる社会を実現できるのではないかと考えています。また、ワーケーションのようなスタイルも注目を浴びていますが、毎日オフィスに行かなくても1週間ぐらい海を見ながらでも仕事ができるなど、新しい働き方を推進できる手段の1つになり得ると思います。DXへの取り組みの先に何があるのか、この点をよく考えながら進めていくと効果をあげやすくなるのではないかと思います」。

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