クラウドネイティブとは?クラウドファーストとの違いやメリットを解説

Portrait of female engineer working in computer lab

社会全体でクラウドの普及が進むなかで、クラウドネイティブという概念が注目されています。クラウドネイティブは、クラウドを有効に活用し、その利点を最大限に生かすうえで重要な概念です。そこで本記事では、クラウドネイティブという用語の意味や仕組み、混同されやすい「クラウドファースト」との違いなどについて解説します。

「クラウドネイティブ」と「クラウドファースト」の違い

「クラウドネイティブ」と「クラウドファースト」。どちらもクラウドの利用に関する言葉ですが、その意味は異なります。クラウドネイティブについて知るためには、まずクラウドファーストとの違いを理解しておきましょう。

クラウドファーストとは、新しいシステムを検討したり更新する際に「クラウドの利用を優先する」という意味の言葉です。クラウドはオンプレミスに比べて、「低コスト」「早期の導入・運用が可能」といった利点があります。こうしたメリットを得るため、SaaSなどのクラウドサービスの利用やクラウドによるシステム構築を優先するのがクラウドファーストです。

一方、クラウドネイティブとは、単にクラウドを採用するだけでなく、「クラウドの利点を徹底的に活用する」ことを意味します。つまり、クラウドの利用を「優先」するクラウドファーストに対して、クラウドネイティブはクラウドの利用を「前提」として、クラウド環境に最適化されたシステムやアプリケーションを設計・開発することを指します。

クラウドネイティブのメリットとは?なぜ今、注目されているのか

では、なぜ今、クラウドネイティブが注目されているのでしょうか?その理由は、クラウドネイティブの特徴である俊敏性や柔軟性にあります。

クラウドネイティブの普及を支援している非営利団体「Cloud Native Computing Foundation(CNCF)」は、クラウドネイティブについて以下のように説明をしています。

クラウドネイティブテクノロジーは、パブリッククラウド、プライベートクラウド、ハイブリッドクラウドなどの最新のダイナミックな環境で、スケーラブルなアプリケーションを構築・実行することを可能にします(※1)。 

つまり、クラウドネイティブはシステムやアプリケーションにおいて、速やかで柔軟な拡張を可能にします。近年、社会の変化は加速度を増しており、ビジネスにおいてもスピードアップが求められています。そのため、新たなアイデアや、顧客からの要望をできるだけ早くシステムやアプリケーションに反映しなければなりません。しかし、そうした工程には、サーバーの増設やストレージの追加などが必要となります。

その点、クラウドネイティブは、クラウドを前提としているため、システムを稼働した後でも容易に仮想サーバーや仮想ストレージなどの追加を行うことができます。昨今の流れの早いビジネス環境に対応するうえで、クラウドネイティブの俊敏性や柔軟性は大きな武器になるのです。

こうした背景から、現在、クラウドネイティブは急速な勢いで普及しています。世界的なITリサーチ会社のガートナー(Gartner)は、IT業界のトレンドを選出する「2022年の戦略的テクノロジのトップ・トレンド」の中でクラウド・ネイティブ・プラットフォームを挙げ、2025年までに新規デジタル・イニシアティブ(新規のデジタル構想・戦略)の95%がクラウドネイティブ・プラットフォームによるものになると予測しています(※2)。また、クラウドネイティブについて、同社は「企業は従来の『リフト・アンド・シフト』から脱却し、クラウド・ネイティブ・プラットフォームに移行することが必要になります。これにより、価値実現までの時間の短縮とコスト削減が可能となる」と言及し、現在のビジネス環境におけるクラウドネイティブの優位性について高い評価を与えています。

リフト・アンド・シフト(リフト&シフト)とは... 既存のシステムやアプリケーションをそのままクラウ上へ移行(シフト)し、段階的にクラウド環境に最適化(シフト)していく方式。

クラウドネイティブを活用したビジネス創出事例

ここまでクラウドネイティブの意味やメリットについて解説しましたが、具体的にどのようにクラウドネイティブを活用することができるのでしょうか。以下、クラウドネイティブを活用してビジネス創出を実現した企業の例をご紹介します。

NETFLIX:Netflixでは、1日に100回のデプロイ(開発したソフトウェアを運用環境に配置・展開すること)を行う必要があるため、社内でクラウドネイティブによるPaaS(Platform as a Service)を構築しました。これにより、Netflixの各部署では、必要な時に何度でもデプロイを実施できるため、1億人を超えると言われている世界中のユーザーのニーズへの対応が可能になっています(※3)。

Uber:2014年ごろからサービスが急拡大したUberは、クラウドネイティブによるインフラストラクチャシステムを構築。エンジニアがデプロイを実施してから、本番システムでコードが稼働するまでの時間を大幅に短縮し、速やかなサービスの拡張を可能にしました。(※4)。

Epic Games:アメリカのゲーム会社であるEpic Gamesは、クラウドネイティブにより、「Unreal Engine4」(UE4)という3Dゲームエンジン・ゲーム開発環境を開発しました。UE4は2015年に無償化され、現在では世界中のゲーム会社やゲーム制作会社に利用される、世界的サービスとなっています(※5)。

2030年までに、日本でもクラウドネイティブが一般化する?!

海外の企業だけでなく、国内の企業でもクラウドネイティブの活用は徐々に進みつつあります。また、日本政府も新たな社会「Society 5.0」を実現するため、クラウドネイティブの活用を推進しています。

例えば、総務省は令和2年版の情報通信白書において、通信ネットワーク技術の進化がクラウドネイティブの一般化を加速するとしています(※6)。5G技術の進展などにより、従来、オンプレミスの専用機器で構築されていた基地局機能やコアネットワーク機能のクラウド化が可能になります。さらに、AI(人工知能)やホワイトボックス(汎用的な通信装置)を組み合わせることで、クラウド上のネットワークリソースを柔軟に管理・制御できるようになり、膨大な数のデバイスやセンサの分散処理が可能になります。これは、私たちを取り巻くデジタル環境全体がクラウドネイティブ化することを意味します。

通信ネットワークに関する技術動向

出典:総務省「Beyond 5G推進戦略」(2020)通信ネットワークに関する技術動向

総務省は、こうした環境が2030年ごろまでには実現すると予想しています。2030年までの数年間で、私たちのデジタル環境は大きく変化していくことでしょう。そのため、急速な変化に取り残されないためにも、デジタル技術の最新事情への注視が必要です。

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参考:

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