BCP(事業継続計画)とは?基礎知識と策定方法

オフィスでBCPを策定する従業員

今から10年前、2011年に発生した東日本大震災によって、事業を一時的にストップせざるを得ない事態に追い込まれる企業が多く発生しました。その教訓から、大きな災害の際にも事業を継続できるようにするためのBCP(事業継続計画)に注目が集まりました。

さらに2020年に入って、新型コロナウイルスの感染拡大が企業活動に多大な影響を与えることになりました。災害や事故などとは異なる危機に直面して、改めてBCPに目を向ける機会が訪れていると言えます。

そこで今回のブログでは、過去の記事も参照しながら、BCPの基本や策定方法について概要を説明していきます。

BCPとは?言葉の意味と目的、メリット

BCPの意味と背景

BCPについて、内閣府は以下のように説明しています。

大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画のことを事業継続計画(Business Continuity Plan、BCP)と呼びます。

出典:内閣府 事業継続ガイドライン第三版

予期せぬ事態に陥ったときに、事業の継続と復旧を図るためにBCPが必要となります。BCPがなければ緊急時に事業継続のための有効な手立てをスピーディーに打ち出せず、場合によっては事業の縮小・停止、あるいは従業員の解雇や倒産を余儀なくされる可能性もあります。実際に、2011年の東日本大震災に関連した倒産は2020年10月までで1969件(※1)に達しています。

日本におけるBCPは、2001年のアメリカ同時多発テロ事件や2011年の東日本大震災といった非常事態が発生する度に注目を集めてきました。一方で、2018年時点のBCPの策定割合は大企業で6割強、中堅企業で3割強にとどまるとの調査結果を内閣府が出していたり、帝国データバンク(※2)は2020年時点でBCP策定企業が16.6%にとどまることを公表していたりと、現在でも完全にBCPが浸透したとは言い難い状況です。

BCPを策定するメリット

高層ビル群

企業がBCPを策定することの最大のメリットは、緊急事態が発生した場合でも計画に沿って速やかに対応することができ、経営面での被害を最小限にとどめられることでしょう。また、「災害時・非常時の準備はできていますか?BCP(事業継続計画)による経営改善のススメ」でご紹介しているように、BCPを策定すること自体には以下のようなメリットもあります。     

  • 業務プロセスを見直す機会になり、効率的な方法への改善が図れる
  • 災害時・非常時の対策を整えることで、取引先からの信頼を高めることができる
  • 情報紛失を起こりにくくする観点から、業務のデジタル化やペーパーレス化を進めることができる
  • トラブル時の対応を検討する過程で情報共有が進むとともに仕事の優先順位が明らかになるため、スタッフのスキル向上につながる

このように、BCPを検討・策定することは社内の業務プロセス効率化の機会にもなり、顧客や地域住民からの信頼獲得につながります。「仕方なく作らなければいけないもの」としてとらえず、企業の地位向上と競争力強化のために積極的に取り組むべき業務と言えるでしょう。

BCPの策定プロセス

中小企業庁では、日本企業の99%を占める中小企業へのBCP浸透のために「中小企業 BCP 策定運用指針」を公表しています。ここでは、その解説を参考に、BCPの策定プロセスを以下の3点にまとめて説明します。以下を参考に、災害・テロ・感染症・個人情報の流出など、考えられるリスクごとに対応を検討するのがよいでしょう。

基本方針と対象商品の検討

まず、BCPを策定する目的である基本方針と、優先的に製造・販売すべき対象商品を検討します。

基本方針は、会社の経営方針の延長線上にあるもので、「何のためにBCPを策定しなければいけないのか」に対する答えとして経営者が準備するべきものです。中小企業庁では、以下のような基本方針を一例としてあげています。

  • 人命(従業員・顧客)の安全を守る
  • 自社の経営を維持する
  • 供給責任を果たし、顧客からの信用を守る
  • 従業員の雇用を守る
  • 地域経済の活力を守る

また、商品・サービスの供給が停止することで自社や顧客に大きな影響を及ぼす商品を、一つだけ対象商品として選定します。もちろん、できるのであれば全ての商品を守りたいのですが、緊急時に限りあるリソースの範囲内で基本方針を実現させるには、対象商品を最重要商品一つに絞る必要があるのです。

トラブル発生時のリスクの見積もり

災害や大事故、パンデミックの発生によって、インフラの影響と会社が受けるリスクを見積もります。たとえば、大地震であれば以下のような影響が考えられます。

  • 停電が発生して水道とガスが停止する。その後、電気、水道、ガスの順番で復旧する
  • 一部の道路で通行規制が発生し、それ以外の道路でも渋滞が発生する
  • 発生直後は電話やインターネットがつながりにくくなる
  • 発生直後は鉄道の運行が完全に停止する

また、会社では以下のようなリスクが発生すると考えられます。

  • 一部の従業員が負傷する
  • 従業員およびその家族の負傷、交通機関の停止などにより、一部の従業員が出社できなくなる
  • パソコンやサーバーなどの機器が損傷し、重要な書類・データの一部が完全に失われる
  • 工場・店舗が倒壊・火災の被害にあう

2021年現在であれば、新型コロナウイルスを始めとした感染症の拡大についても記載するべきでしょう。

事前対策と体制整備

リスクの見積もりを済ませたら、それに対応する形で事前対策を検討します。

検討のためには、現状把握と対策の検討という2ステップに分けて考える必要があります。まず人・情報・モノ・金の各分野に分けて、事前対策の実施状況が現状でどのようになっているのか把握し、不足している部分の対策を追加するわけです。

なお、こうした事前対策の洗い出しおよび検討の際に、バックオフィス業務が後回しにされがちです。人事や総務などの業務では紙中心で実施・管理が行われており、災害時には容易に焼失・流出してしまうことが予想されます。バックオフィス業務のBCP対応については、「BCP(事業継続計画)におけるバックオフィス業務のデジタル化」でも触れていますのでご参照ください。

BCPの運用プロセス

オフィスでコーヒーを飲みながら仕事をする男性

BCPを策定しても、従業員が理解していなければ意味がありません。また、BCPの内容が古くて現状に即していない場合、緊急の際でも役に立ちません。したがって、策定した後には運用プロセスとして従業員の理解を深めるとともに、適宜見直しを行う必要があると考えられます。

BCP定着に向けた社内啓蒙活動の実施

BCPの策定内容を確実に実施できるよう、従業員の理解を深めるための社内啓蒙活動が必要です。

たとえば、自社の組織構成や規模、教育体系などを踏まえて、BCPの内容や進捗状況、役割分担、問題点などを話し合う頻度を決めます。また、話し合い以外にもマネージャーレベルでの情報共有、研修など、自社でできる啓蒙活動を行うようにします。

必要に応じてBCPを見直す

BCPの見直しについては、基準や頻度を決めておくことが重要です。顧客や在庫の状況に大幅な変更があったタイミング、組織変更のタイミングなど、経営管理の内容が変わったときにBCPを見直す必要性が生じるでしょう。他にも、定期的な見直しとして年1回などの機会を設けることが考えられます。

したがって、BCPの中に見直しの基準や頻度を確実に盛り込むようにします。

新型コロナウイルスの感染拡大とBCP

新型コロナウイルスの感染拡大は、災害や事故とはまた異なる危機対応の必要性を企業に突きつけることになりました。

社会インフラが破壊されることはなかったものの、テレワークを前提とした作業環境の構築や、感染予防のための消毒グッズおよび間仕切りなどの準備、社員を含めた関係者の感染が判明した際の対応マニュアルの整備などが求められています。

こうした予期していなかった事態への対応策をBCPに盛り込む必要のある企業も少なくないのではないでしょうか。その意味で、BCPを一度策定しただけではなく、幅広い危機に対応しうるものになっているのか、定期的な見直しを行うべきと考えられます。

まとめ

BCPは、企業が緊急時でも最低限のビジネスを継続できるよう平時に決めておくべきものです。BCPの策定・運用プロセスは、今回見たように基本方針・重要商品の検討、現状把握と対策の検討、社内啓蒙活動と見直し作業で構成される運用プロセスの検討と実施の順番で決めていくようにしましょう。

ドキュサインでは、BCPについて以下のような記事を公開しています。併せてお読みいただくことで、BCPへの理解がより一層深まるでしょう。

 

参考:

筆者
Tomohiro Adachi
Content Marketing Manager
公開
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