ここまで進んでいる!地方行政のDX最前線

愛媛県松山市の風景

デジタル庁の創設や「脱ハンコ」の政策により、加速を続けている行政のデジタル化。その勢いは中央官庁だけでなく地方行政にも波及しています。現在、全国の地方公共団体では、さまざまなデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが進められています。行政手続きにおける押印廃止や各種オンライン申請はもちろん、行政のデジタル化が強力に進められているところもあります。そこで本記事では、地方公共団体における先進的なDXの事例を紹介し、私たちの身近に見られる「行政のデジタル化」の最前線に迫ります。

「地方公共団体版のデジタル庁」を新設した三重県

DXに先進的な地方公共団体として、まず挙げられるのが三重県です。2021年4月、三重県は「三重県版デジタル庁」という位置付けで、「デジタル社会推進局」という新たな局を設立しました(※1)。三重県では以前から、デジタル技術を活用しながら県庁業務の在り方や職員の働き方を見直す「スマート改革」を進めてきましたが、その取り組みと横断的な社会全体のDXを推進するため、デジタル社会推進局が設立されました。

同局のトップである最高デジタル責任者 (CDO)は公募により選出され、民間人材を常勤のCDOとするのは、全国の地方公共団体で初めての試みであり、DXに対する先進的な姿勢が伺えます。

今後、同局は「スマート自治体」の実現を目指し、AI(人工知能)や RPA の導入、ペーパーレス化を通じた、行政手続きの電子化などに注力していきます。また、同局はデジタル技術を活用した事業創出にも力を入れており、伊勢志摩を拠点に離島や山間部を結び、観光や防災、産業分野などの課題解決を実現する「空飛ぶクルマ(※2)」の実証実験にも取り組んでいます。

DX推進プラットフォームを開設した愛媛県

三重県と同様に、デジタル技術を地域課題の解決に効果的に活用することを目指し、積極的にDXに取り組んでいるのが愛媛県です。愛媛県は、2021年3月、県民や市町との協働・官民共創の3つを基本方針として掲げた「愛媛県デジタル総合戦略」を策定(※3)し、行政、暮らし、産業を横断したDXに取り組むと発表しました。これに伴って、新たに「デジタル戦略局」を設置するなど、DX推進の組織体制を強化しています。

さらに2021年4月には、DX推進プラットフォーム「エールラボえひめ」を開設し、個人や事業者、研究機関などが協働し、DXによる地域課題解決プロジェクトを推進するプラットフォームとして運用しています。また、エールラボえひめでは、愛媛県からのプロジェクト支援を受けることも可能であり、官民協働によるDXの推進に力をいれています。

エールラボえひめウェブサイトのイメージ

愛媛県官民共創デジタルプラットフォーム「エールラボえひめ」のホームページ

これまで愛媛県では、2018年にデジタルマーケティングの専門部署である「プロモーション戦略室」を立ち上げ、インバウンドの誘致や県産品の販売促進などを進めてきました(※4)。2020年には、ショッピングサイト上に設けた県産品販売サイト「愛媛百貨店」で、過去の販売履歴などを活用して構築したキャンペーン施策を実施。月間売上1億円を超えるなど、高い成果を発揮しています。

スタートアップ支援・連携を通じてDXを推進する広島県

広島県では、AIなどに強みを持つスタートアップ・ベンチャー企業との連携によりDXが推進されています。

同県は2018年5月からAI、IoT、ビックデータなどの最新テクノロジーを活用して事業創出を目指す「ひろしまサンドボックス」を運営しています(※6)。ひろしまサンドボックスでは、広島県内の企業が県内外の企業や人材と協働して、地域課題の解決などを目指す実証実験を実施しています。これまで、農林水産、観光、交通、製造など、幅広い分野で実証実験が実施され、その実証データをWebサイト上で公開しています。

そして、2020年11月には、ひろしまサンドボックスの次のステップとしてアクセラレーションプログラム「D-EGGS PROJECT」が開始されました。このプログラムでは、全国から募集した事業アイデアの実証実験を広島県が支援することで、県内におけるDXの推進やイノベーションの創出が図られています。

ひろしまサンドボックス データカタログサイト

ひろしまサンドボックス」が無償公開しているデータカタログサイト

地方自治法施行規制の改正により、地方公共団体の電子契約活用も加速

このように、現在、日本全国で地方公共団体によるDXの取り組みが進められています。2021年5月にはデジタル改革関連法も成立し、行政のデジタル化の流れは今後ますます加速していくと予測されます。近年では、こうした流れを後押しするため、法改正などの環境整備も進められています。

その一例が、2021年1月の地方自治法施行規則の改正です。従来の規則では、地方公共団体による電子契約の利用に厳格な規定が定められていたため、電子契約の普及が進まず、行政における脱ハンコやペーパーレス化の障壁となっていました。しかし、それが今回の改正で大幅に緩和され、地方公共団体と企業との契約にも、クラウド型の電子署名サービスが利用できることとなりました。これにより、今後の地方公共団体における電子署名サービスの普及も見込まれています。

環境整備も含めた社会全体のデジタル化は、今後もますます進化していくものとみられます。この流れに取り残されないよう、まずは身近なところから課題を見つけ、DX推進に取り組んでいくことがより一層重要になってくるでしょう。

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