印紙税法とは?収入印紙が必要な契約書と非課税となるケース

契約書にサインする人

領収書を発行したり契約書を取り交わす際などに利用される収入印紙。経済的な取引に伴い作成する文書には税金(印紙税)が課せられますが、その税金や手数料などを徴収するために政府が発行している証票のことを収入印紙といいます。

では、どのような文書で収入印紙が必要で、どのように印紙税の金額が決められているのでしょうか。そもそもなぜ契約書などに収入印紙を貼らなければならないのでしょうか。今回は、収入印紙に関するさまざまな根拠を定めた「印紙税法」の基礎知識と、ここ数年で普及が進んでいる「電子契約」ではなぜ非課税になるのかを解説します。

印紙税法とは?

印紙税法とは、印紙税の課税対象となる文書の種類、納税の義務を負う対象者、印紙税額、印紙税を納付しなかった場合の罰則などについて定めた法律です(※1)。

印紙税の歴史は古く、日本で初めて印紙税が導入されたのは1873年にさかのぼります。当時は江戸時代の名残りから税負担が農業者に偏っており、商工業者にも同等の税負担を課すために印紙税が導入されました(※2)。そして、1899年に印紙に関する規則をまとめた印紙税法が制定。1967年に全文改正され、その後、複数の改正を経て現行の印紙税法に至っています。

印紙税法では、印紙の貼付が義務づけられている文書を「課税文書」と呼びます。契約書などのビジネスでやりとりされる文書のなかには、売上など金銭のやりとりを発生させるものを数多く含みます。これらを課税文書として定義・分類し、どの課税文書にどれだけの額の印紙を貼付すればよいのかを明確にするのが、印紙税法の役割です。

なお、現行の印紙税法では、納税の義務を負うのは課税文書の作成者です。共同で作成した場合は、連帯して納税の義務が発生し、課税文書の作成時に納税義務が発生します。納税は、原則として課税文書に印紙を貼付する形で行われますが、特例として金銭で印紙税を納付することもあります(※3)。

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印紙税法における20種類の「課税文書」

では、どのような文書に印紙の貼付が義務付けられているのでしょうか。印紙法第2条には、以下の20種類の課税文書が定められています。

  1. 不動産、鉱業権、無体財産権、船舶もしくは航空機または営業の譲渡に関する契約書、地上権または賃借権の設定または譲渡に関する契約書、消費貸借に関する契約書、運送に関する契約書(用船契約を含む)
  2. 請負に関する契約書(例:工事請負契約書、物品加工注文請負書、広告契約書など)
  3. 約束手形または為替手形(手形金額の記載のない手形は非課税)
  4. 株券、出資証券もしくは社債券又は投資信託、賃付信託、特定目的信託もしくは受益証券発行信託の受益証券
  5. 合併契約書又は吸収分割契約書もしくは新設分割計画書
  6. 定款(会社設立の時に作成される定款の原本に限る)
  7. 継続取引の基本となる契約書
  8. 預貯金書、貯金証書
  9. 倉荷証券、船荷証券、複合運送証券
  10. 保険証券
  11. 信用状
  12. 信託行為に関する契約書
  13. 債務の保証に関する契約書
  14. 金銭または有価証券の寄託に関する契約書
  15. 債権譲渡または債務引き受けに関する契約書
  16. 配当金領収証、配当金振り込み通知書
  17. 売上代金にかかわる金銭又は有価証券の受取書、売り上げ代金以外の金銭又は有価証券の受取書
  18. 預貯金通帳、貯金通帳、信託通帳、掛金通帳、保険料通帳
  19. 消費貸借通帳、請負通帳、有価証券の預かり通帳、金銭の受取通帳など
  20. 判取帳

ここで注意が必要なのは、文書の名称ではなく、文書に記載されている内容によって課税文書であるかどうか判断されるという点です。

また、課税文書ごとに印紙税額は異なります。例えば、領収書は17号文書の「売上代金にかかわる金銭又は有価証券の受取書、売り上げ代金以外の金銭又は有価証券の受取書」に該当しますが、受取金額が5万円未満の場合は非課税、5万円以上100万円以下では200円の納税が必要になり、全部で14段階の税額が設けられています。なお、クレジットカード決済の場合は受取金額が5万円以上でも収入印紙は不要です(「領収書に「クレジットカード払い」である旨、記載が必要です)。これは、金銭のやり取りが存在しない信用取引にあたるためです。

領収書以外にも、契約書に印紙の貼付が求められることは広く知られていますが、契約書の内容や取り交わされる業種によって分類が異なります。例えば、不動産売買契約書や不動産交換契約書などの不動産関連の契約書は1号文書に該当する一方、工事請負など業務請負に関する契約書については2号契約書に該当し、それぞれ印紙税額が異なります。詳細は、以下の国税庁Webサイトにてご確認ください。

印紙税を納付しなかったらどうなるのか?

一方で、印紙税を納付しなかった場合はどうなるのでしょうか。また、その罰則はどのようなものでしょうか。

まず、課税文書の作成者が印紙を貼付しなかった場合、納付しなかった印紙税額及びその2倍に相当する金額との合計額の過怠税が徴収されます(※4)。つまり、10,000円の印紙税を納付しなかった人には、10,000円(納付しなかった印紙税額)と20,000円(その2倍に相当する金額)を合算した30,000円の過怠税が課されることになります。

また、印紙税法第5章(第21条~24条)には、印紙税違反に関する罰則が設けられています。例えば、不正により印紙税を納付しなかった場合は「3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金」、規定額の印紙を貼付しなかった場合には「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」となります。そのため、ビジネスシーンで課税文書を作成したり、印紙を取り扱ったりする方は、これらの法令や印紙税額をしっかり確認したうえで、適切に印紙税を納付するよう注意しましょう。

なぜ電子契約では収入印紙は不要なのか?

ここ数年、日本でも普及が進んでいる電子契約の場合はどうでしょうか。

国税庁の見解では、電子契約では収入印紙は不要とされています。印紙税法が規定する「課税文書の作成」とは、用紙などの紙媒体に課税事項を記載して相手方に交付することを指します。そのため、電子契約サービスを利用したり、電子メールに添付するなどして契約書を取り交わした場合は、課税文書を作成したことには当たらず、印紙税は発生しないとされています(※5)。

この点については、第162回国会でも答弁が行われており、そこでも「文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されない」という見解が示されています(※5)。ただし、電子データ(電子ファイル)を送信した後、印刷したものを原本として相手方に交付した場合には、課税文書に該当し印紙税が課されることになるため注意が必要です。

その他にも、電子契約サービスを利用することで紙代や郵送費などのコストを削減でき、契約手続きの迅速化や文書管理の効率化にもつながります。『電子契約サービスを使う5つのメリット』では、電子契約の特徴やメリットを解説していますので、あわせてご覧ください。

 

参考:

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