契約DXを実現するためのベストプラクティス

さまざまな分野で進むDX。これは契約業務も例外ではありません。しかし、電子契約サービスをはじめとしたリーガルテック市場は右肩上がりで拡大しているものの、欧米に比べると日本における契約業務のDXはまだ発展途上であると言われています。海外と日本ではどのような違いがあるのかー。どのように契約DXを実現すればよいのかー。

本記事では、「契約」のあらゆる課題をテクノロジーの力で解決するMNTSQ株式会社 代表取締役の板谷隆平氏とドキュサイン・ジャパン株式会社 カントリーマネージャー竹内賢佑の対談から、契約DXのベストプラクティスをひも解いていきます。

MNTSQ板谷氏とドキュサイン竹内
(左から)MNTSQ板谷氏、ドキュサイン竹内

電子契約の現状。海外と日本の違いとは?

板谷氏:海外と比べると、日本における契約の電子化は遅れていると言われています。電子契約のリーディングカンパニーである御社から見ていかがですか。

竹内:海外の先進企業においては、すでに80〜90%以上の企業が紙を廃止していると言われています。米国と欧州はとくに早い印象ですね。これはBtoBでもBtoCでも同じ状況です。これに対して、日本での電子契約の採用比率はおおよそ30%となっています。さらに採用して実際に使用している企業の割合、使用率で言うと10%もないのではないかと考えられます。

板谷氏:海外では8割から9割の先進企業が電子契約を導入しているということに驚きますが、国内における使用率が1割未満というのは私の肌感覚でも同じですね。この違いはどうして生まれるのでしょうか。

竹内:いくつか理由があると思います。まず欧米諸国はハンコではなく、サインの文化です。そのため、契約についても「利便性」や「セキュリティ」といった点が重視され、電子契約が受け入れられやすい土壌があります。また、郵便事情も関係しています。欧米の郵便事情はあまり良いとは言えませんので、セキュリティなどを考えると電子化することにメリットを感じやすいのではないでしょうか。特に米国は国土が広大で、郵送では契約書のやり取りだけで膨大な時間がかかってしまいます。これらの理由から、できるだけ電子化を進めたいというニーズが本来あったということです。

板谷氏:日本ではコロナ禍をきっかけに電子契約が伸び始めたという印象です。

竹内:おっしゃる通りです。ただわずか2年、3年で急激に浸透するわけではありませんので、日本ではようやく始まったと言えます。以前からニーズのあった欧米とは異なりますね。

契約DXの第一歩 - 電子契約の普及に向けた取り組み

板谷氏:契約DXの第一歩となる電子契約が日本でさらに普及していくために、あるいは日本企業に受け入れてもらいやすくするために、御社で何か取り組まれていることはありますか。

竹内:電子契約の普及にはやはり、経営層の理解が必要です。契約は最終的な署名・捺印だけではなく、(契約締結に至るまでに)バックエンドで稟議プロセスが走っていたり、やりとりが多く発生していたりすることを分かっていただくこと、その過程には苦労やさまざまな課題があることを理解してもらうことが重要ではないでしょうか。

また、文書の管理コスト、特に紙の場合は管理コストが膨大です。SDGsの話にもつながりますが、紙を使わないようにしていくといった啓蒙活動を行っていくことも大切だと考えています。

板谷氏:啓蒙は大切ですね。契約書の管理はAI(人工知能)と相性が良いので、自動的に管理できるソリューションなどと合わせることによって、世の中の契約管理をより効率的に、そして価値が高いものにしていくために、御社と一緒に啓蒙できればよいと感じています。

竹内:お客様に理解してもらうのには地道な努力が必要ですね。

板谷氏:私たちMNTSQのお客様には、コンプライアンスの意識が高く、リーガルテックの必要性に理解のある企業様も多くいらっしゃるので、比較的スムーズに導入いただいている印象です。一方、そうではないお客様にどう働きかけていくかが課題であると感じています。御社では、必要性をあまり感じていない方に働きかけるためにプロダクト面で工夫していることはありますか。

竹内:例えば、弊社はシヤチハタ社と協業しており、電子印鑑機能を提供しています。これは心理的な隔たりの解消につながります。意識の高い、あるいは先進的な企業ではあまり気にされないかもしれませんが、これまでは捺印していたものを電子印鑑(電子書名)に置き換えて大丈夫なのかということを心配されるお客様にとっては、大事なポイントの1つであると考えています。

板谷氏:面白いですね。既存の文化との連続性や、これまでのプラクティスとの接合性を意識的に演出することによって、あまり先進的ではない企業様にとっても受け入れられやすいものにする、ということですね。

竹内:中には印鑑をお辞儀させたいとおっしゃるお客様もいらっしゃいます。必要なのかと思われるかもしれませんが、もし1社でもそうした要望があるのであれば、提供する価値はあると思っています。

また、導入後の利活用について悩んでいるお客様には「伴走支援サービス」を提供しています。お客様に寄り添って支援、コンサルティングしていくことが非常に重要だと考えています。

板谷氏:伴走支援の重要性は私も同感です。リーガルテックはITツールですから、導入すればすべて上手くいくわけではありません。導入後にどうやってオペレーションに馴染ませていって、浸透させていくかという点が、プロダクトの機能そのものと同じくらいに重要であると私も思います。ドキュサイン様の伴走支援はどういったものがありますか。

竹内:何層かに分かれていて、まずは問い合わせ先としての「テクニカルサポート」があります。こちらは無償で提供しています。

伴走支援については、弊社では「オンボーディング」と呼んでいますが、お客様の業務を理解した上で、どうすれば社内で浸透するのか、あるいはどうすれば取引先が一緒に電子契約化に取り組んでくれるのか、といったところをコンサルティングしています。

もう1つは「カスタマーサクセス」です。採用いただいた部署のみならず、他の部署への横展開をすることで価値を生み出していくといった支援もしているので、こういったサービスをぜひ活用していただければと考えています。

法務部門の問題意識と対応策

板谷氏:電子契約の導入では、企業の法務部門とコミュニケーションをとられることも多いと思います。法務部門の皆さまが抱えている問題意識はどこにあるのでしょうか。

竹内:法務部門の方からのご質問は法律にまつわること、例えば、電子契約の法的効力に関するものが多いですね。実は、ほとんどの契約・合意文書で電子契約を利用することができます。

あとは取引先が対応してくれない場合に、電子と紙の2本立てにしても問題ないか、あるいはどうすれば良いかなどといったオペレーションの部分に対しても質問をいただくことがあります。

板谷氏:法務の観点からはいろいろ気になることも多いかと思います。世界各国での電子契約の有効性なども気にかかる部分だと思いますが、御社では各国の電子契約の適法性をホームページで公開されていますよね。

竹内:電子契約や電子署名に関する法律は日々変わっていきますし、特にグローバルで情報をキャッチアップしていくのは大変です。当然ですが、確認してさらに質問したいというお客様には、できる限り我々も対応していこうと日夜努力しています。

板谷氏:その他に電子帳簿保存法への対応についてもよくご質問いただきます。これについて、御社の考え方はいかがですか。

竹内:電子帳簿保存法についてはドキュサインの製品だけで全てが完結できるわけではありません。しかし、そもそも電子署名ソリューションはただオンライン上で署名・捺印ができるだけでなく、同時に「いつ」「どこで」「誰が」という属性もとっています。電子署名ソリューションでは、実は必要な情報がすべて記録されているわけです。そうした情報をどう格納するのか、検索性をどう確保するかといった部分は、まさしく「MNTSQ CLM」の範囲になりますので、そこがつながっていれば情報の網羅性とカバレッジという面でも問題ないというのが私たちの理解です。

板谷氏:ドキュサインで締結した契約書は自動的に「MNTSQ CLM」に取り込まれて、自動的にデータを機械学習によって分析・抽出して検索できるようになっています。うまく役割分担ができていると思います。

竹内:そうした意味で、完全に電子帳簿保存法に対応するとなると、電子契約の導入だけではなく、周りの部分の準備と保管のところまで含めて整備していかないとならないでしょう。

板谷氏:例えば、本当に訴訟などでその契約を有効な証拠として扱おうと思うと、締結した瞬間だけでなく、締結後のメンテナンスなどまで含めて初めてコンプライアンスが満たされるということになります。まさに契約ライフサイクルの問題ですね。

DocuSign x MNTSQで契約業務全体のシームレスなDXを実現

ドキュサインの電子署名を利用する茶色のジャケットを着た男性

ドキュサインの電子署名(製品名:DocuSign eSignature)は、世界180カ国で100万社以上の組織・団体に採用されており、日々の業務から機密情報を含む重要な契約まで、10億人を超えるユーザーがさまざまなシーンで利用しています。場所や時間を問わず、あらゆるデバイスで利用でき、契約DXの第一歩をサポートします。

契約や法務相談のドラフトから管理まで、圧倒的な契約ノウハウと最先端の機械学習テクノロジーでシームレスな契約ライフサイクルを実現する「MNTSQ CLM」と「DocuSign eSignature」の連携ソリューションは、契約書の準備から署名・捺印、管理までの契約ライフサイクル全体を効率化し、契約書を資産として生かすためのシームレスな仕組みを提供します。ドキュサインで締結した契約書を自動的に「MNTSQ CLM」へ取り込むことができるので、少ない工数で契約書をナレッジ化し、電子帳簿保存法に準拠した形で情報を抽出・整理し、台帳管理を行うことが可能です。

製品に関するご質問は、各社ホームページよりお気軽にお問い合わせください。

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※本記事は2022年11月にMNTSQ株式会社およびドキュサイン・ジャパン株式会社が共同で開催したオンラインセミナー「グローバル企業が考えるべき契約DXのベストプラクティス」の内容をもとに作成しています。

Contributeur DocuSign
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